日本財団はなぜ今、熊本城の再建支援を約束したのか
日本財団は、熊本地震で大きな被害を受けた熊本城の再建支援に30億円を拠出することを発表した。日本財団が文化財に拠出する支援額としては、過去最大という。震災直後のこの時期に、異例の早さで文化財保護を約束した背景は何だったのか。
「暗い話ばかりの中、明るいニュースを」
日本財団は19日、熊本地震の被災地に対し、総額93億円の緊急支援策を発表。避難者への医療・福祉支援や非常用トイレの配備、被災者への見舞金といった急を要する支援策とあわせて、30億円の「熊本城再建のための支援」が盛り込まれた。 「毎日暗い話ばかりが流れている。沈んでいる人が多くいる中で、明るいニュースを届けたかった」と、同財団担当者はその意図を説明する。熊本県の象徴である熊本城の再建支援をいち早く約束することで、「被災した人々の心の支えになればと考えました」。
東日本大震災での経験と教訓を生かして
災害時に後回しになりがちな文化財保護支援を迅速に決めた背景には、東日本大震災での経験と教訓があったようだ。同財団は2011年の東日本大震災の約半年後から、12億円規模の文化財保護支援を始動。被災地の沿岸部の漁村で、津波で流された神社の再建やお祭り道具の支援を続けてきた。同担当者は「地域のお祭りが復活すると、それまで離れて避難していた住民が戻ってきた。文化財や文化への支援は、人々の心の支えや希望になるものだと確信しました」 同財団は2014年、東日本大震災での教訓をふまえ、大規模災害の発生時にすぐに緊急支援を拠出できるように特別基金を創設した。毎年50億円ずつ積み立てる計画で、2年が経った特別基金には100億円が積み立てられていた。この積み立てを生かすことで今回、被災者の生活に必要な緊急支援とあわせて文化財の保護にも予算を充てる目処がつき、早期に文化財支援まで表明することができたという。 熊本城は度重なる地震で、国指定重要文化財のやぐらや石垣が倒壊するなど大きな被害を受けた。日本財団は「今この段階で再建にどのくらいの時間と金額がかかるのか分かっていないが、この支援表明が熊本城再建の機運を高める一つのきっかけになれば」と期待を込めている。 (安藤歩美/THE EAST TIMES)