東証、5日から取引時間30分延長へ 決算発表は取引中に前倒し要請、企業の判断分かれる
東京証券取引所は5日から現物株式の取引終了時間を午後3時から午後3時半に30分延長する。売買システムの更改に併せて実施し、終値の透明性を高める仕組みも新たに導入する。わずか30分の小幅な延長が東京市場の活性化につながるかは未知数の面もある。 ■システム障害が発端 「最後の最後まで気を抜かず、万全を期して準備を進めたい」。東証の親会社、日本取引所グループ(JPX)の山道裕己グループ最高経営責任者(CEO)は10月29日の会見でこう強調した。 終了時間延長は1954年以来70年ぶり。きっかけは2020年10月1日に発生した大規模システム障害だ。この日は終日取引ができず、投資家の取引機会が奪われた。 終了時間を遅らせることで、障害が発生しても復旧後に取引を再開できる可能性を高める。JPXは「丸1日、取引が止まってしまうことのない設計」(山道氏)を目指し、このプロジェクトを進めてきた。 海外投資家を呼び込む狙いもある。現在の東京市場の取引時間は1日5時間。8時間半のロンドンや6時間半のニューヨークと比べると見劣りする。ただ、延長売買を仲介する証券会社の負担も考慮し、今回は30分の延長にとどめた。 ■決算発表の前倒しも 投資家も注意が必要だ。取引時間終了前の5分間は「クロージング・オークション」という時間が新設される。売買を成立させず、投資家は「売りたい価格」や「買いたい価格」を提示。この情報を基に終了時に終値を決める。株価はこの間変動せず、投資家は状況をみて注文を出したり取り消したりできる。 上場企業も投資家との向き合い方が問われてくる。JPXは取引時間延長を踏まえ、投資家が取引時間中に判断しやすいように、各社に取引終了後に多かった決算発表の前倒しを要請している。6日に24年9月中間決算を発表予定のホンダは、開示時間を従来の午後3時から午後1時に2時間前倒しする。 一方、取引終了後の発表にこだわる企業も少なくない。大手損害保険の担当者は「取引時間中の発表は短期的、投機的な取引の対象になり、株価が乱高下するのでは」と懸念する。
上場企業の情報開示について、大和総研の神尾篤史主任研究員は「取締役会の決定などは遅滞なく適時開示するのが理想だ」と指摘した上で、投資家の期待に応える情報の質や量を伴う丁寧なコミュニケーションを求めている。(永田岳彦)