瞬きの回数が少ない人ほどニコチン依存症になりやすい…寿命を縮めるのにタバコをやめられない科学的理由
■“欲望や衝動”は自らの意志で選んではいない また、人はお腹がすくと、「何か食べたい」と感じます。やがて、頭の中は食事のことでいっぱいになり、「何でもいいから食べたい」という強い欲求にかられます。 これも脳内でドーパミンが放出されることで、「食べものが欲しい」という衝動が生まれるからです。好きな人ができた際も同様です。 「また会いたい」「会って話をしたい」「2人だけで話がしたい」、私たちはこうした激しい欲求にかられますが、これも脳内でドーパミンが分泌されているからです。 「○○が欲しい」「○○に会いたい」――。こうした欲求を、私たちは「自分の意志で選んでいる」と思っています。しかし、それらはすべて、あなたが出会った対象に対する脳の反応であり、脳がドーパミンを分泌しているからです。 つまり、欲望や衝動とは、あなたがコントロールしているのではなく、ドーパミンがあなたをコントロールしているということになります。 ■ドーパミンが出にくい人は依存症になりやすい? 講演会などで「どんな人が依存症になりやすいのか」と尋ねられることが多いのですが、脳科学的には「生まれつき日常生活でドーパミンが出にくい人」と説明ができます。 普段の生活の中で、興味や関心が乏しい人はドーパミンが出づらいために、お酒や煙草で「なんとかドーパミンを出し生きている」のです。 事実、この「ドーパミンの出やすさ」については人それぞれの遺伝子の違いがあるということがわかっています。 例えば、瞬きをする回数は生まれつき個人差が大きく、この回数はドーパミンを増やす薬(パーキンソン病の治療薬)を服用すると増加します。 もちろん「瞬きの回数が多い=ドーパミンが多い」とは言い切れませんが、実際、「瞬きの回数が少ない人ほどニコチン依存症になりやすい(喫煙率が高い)」というデータは複数あります。 ---------- 山下 悠毅(やました・ゆうき) ライフサポートクリニック院長 精神科専門医 1977年生まれ、帝京大学医学部卒業。2019年12月、ライフサポートクリニック(東京都豊島区)を開設。「お薬だけに頼らない精神科医療」をモットーに、専門医による集団カウンセリングや極真空手を用いた運動療法などを実施している。大学時代より始めた極真空手では全日本選手権に7回出場。2007年に開催された北米選手権では日本代表として出場し優勝。(著者近影:撮影=矢島泰輔) ----------
ライフサポートクリニック院長 精神科専門医 山下 悠毅