「どこも高い」ため息が出る都内マンション。23区は初の1億円超え、もはやお金持ちしか買えない? アジア富裕層の投資でマネーゲーム化、パワーカップルも相場を引き上げ
東京の都心だけでなく、周辺エリアの物件も上昇傾向は同じ。価格が1億円以上の「億ション」は2023年に首都圏で計4174戸が売られたが、これはバブル期の1990年に記録した3079戸を上回って過去最多を更新した。2023年の総戸数2万6886戸のうち、およそ6戸に1戸が億ションだったことになる。 都内の市場は天井知らずの様相で、大手デベロッパーのある幹部は「マンションの価格は姿が見えない『空気』みたいなもの。みんなが上がり続けると思えば上がっていく」と平然と言ってのける。 ▽低金利、パワーカップル、原価高騰、海外富裕層… マンションはなぜ高くなったのか。デベロッパーや専門家らへの取材では、理由は主に四つ。(1)低金利(2)パワーカップルの増加(3)用地代や建築費といった原価の高騰(4)海外富裕層の存在―がそれぞれ絡み合っている。 2013年に日銀が始めた大規模な金融緩和策によってお金を借りる際の金利が下がり、高額な物件でも手を出せる世帯が多くなった。住宅ローンの借入額が増えても返済額はそれほど膨らまず、家計に与える打撃が和らぐためだ。インターネット銀行では変動金利型の住宅ローンで年0・2%台の商品もあり、国土交通省によると新規貸し出しの8割弱が変動金利型という。
家計側の要因でもう一つ、高収入の共働き世帯「パワーカップル」の増加もある。野村不動産によると、自社物件「プラウド」を購入した共働き世帯では年収1500万円超が2023年に37・4%を占めた。2015年の19・6%から年々上昇を続けており、「パワーカップルの増加が好調なマーケットを支えている」という。正規雇用の女性が増えたことが背景にあるとみられ、こうした世帯が通勤に時間がかからない都心に近い立地のマンションを好んで買っている。 上昇する原価を価格転嫁している側面も。部材の価格や人件費が上昇を続け、ターミナル駅に近いなど交通利便性が高い土地をデベロッパーが高値で購入するケースが多い。テレワークが浸透した新型コロナウイルス禍では、郊外に立地していても暮らしやすさを重視する消費者の目に留まったが、コロナ収束後は資産価値の高さから中心部の物件に人気が集中している。大手の土地仲介会社によると、こうした需要がオフィスやホテルといった従来の用途と競合する形で土地の価格が上がっている。