2004年に製造業での派遣労働解禁…重要局面ではトヨタがいつも献金額トップだった【自民党と企業献金 蜜月の半世紀】#11
【自民党と企業献金 蜜月の半世紀】#11 非正規への追い込み30年(3) ◇ ◇ ◇ トヨタまでスポンサー撤退で商業五輪「終わりの始まり」…章男会長「政治色も強くなり」とバッサリ なぜ非正規雇用は、この30年で働く人の2割から4割に増えたのか。今シリーズの初回は、1995年に日本経営者団体連盟(日経連)が出したリポート「新時代の『日本的経営』」、第2回では99年に労働者派遣法が改定され、派遣対象が原則自由化されたことを取り上げた。 95年と99年で共通していることがある。それは、自民党への献金額が最も多かった企業がトヨタであるということだ。95年は4540万円、99年は6200万円だった。 そのトヨタは2002年、会長の奥田碩が経団連会長に就任する。首相は小泉純一郎。新自由主義の政策を推し進めていた。 奥田は小泉をパートナーとし、これまでとは違う次元で政治に踏み込んでいく。経団連自身、ホームページの中の「経団連の沿革」でこう説明している。 「奥田会長が経済財政諮問会議の民間議員に就任して以来、政府主催の主要会合の民間議員に経団連会長自らが就任し、政府の経済、財政、産業、科学技術など幅広い分野における政策論議に参加しています」 ■献金トップ10はすべてメーカー 経団連の念願は、製造業への派遣労働の解禁だった。99年の法改定では、派遣労働が原則自由化されたものの、製造業務は認められていなかった。労働者側は、正社員が非正規雇用に置き換わっていくことを懸念した。経営者側には円高で人件費が高騰しており、国外に工場を移す「産業空洞化」が起きるという主張があった。 結局、04年に製造業への派遣労働は解禁された。この年の自民党への献金額もトップはトヨタで6440万円。トップ10は全てメーカーだ。 「企業ファースト」の奥田の考え方が表れているのが、03年1月の内外情勢調査会での講演だ。奥田は消費税を25年時点で16%に上げる試算を披露した上で言う。 「企業が強くならなければ、個人の生活も日本の経済も決して良くはならないわけであります。法人税率を思い切って大幅に引き下げることにより、国内の事業を活性化させる。その果実は、国内の投資家に対しては配当というかたちで、また従業員、消費者に対しては賞与や賃金、雇用というかたちで還元され、それが再び新規の設備投資あるいは消費に振り向けられ、好循環を生み出していくのであります」 (=敬称略) ▽渡辺周(Tansa 編集長)日本テレビを経て2000年に朝日新聞入社。17年にワセダクロニクル(現Tansa)を創刊、電通と共同通信社の癒着を暴く「買われた記事」で、日本外国特派員協会「報道の自由推進賞」。寄付で運営し非営利独立を貫く。ご支援を!