欧州司法裁判所が示した「かくもデタラメな対ロ制裁」
欧州における「司法権」の独立
5月7日、ウラジーミル・プーチン大統領が5期目の政権を始動した。そんな中、EUがロシアに科している制裁について、改めて考える。 「移民法」のヤバすぎる中身…このままでは日本の「社会保障」が崩壊する ※ 裁判所の独立性が保たれていることが証明されれば、「法の支配」(rule of law)を無視した行政権の行使にも歯止めがかかる。 政治指導者が恣意的な行政によって、国政を不法に歪めても、それを糺(ただ)し、元に戻せるかもしれない。 そう考えると、いわゆる「司法権」の独立はきわめて重要であると指摘しなければならない。 その意味で、4月10日に欧州連合(EU)の欧州司法裁判所(ECJ)が、ロシアの二人のオリガルヒ(政治家と結託して大規模化した寡頭資本家)、ピョートル・アーヴェンとミハイル・フリードマンの制裁リストへの掲載を無効とする決定を下した判決は重大な意義をもっている。 要するに、政治先行の制裁が根拠もなく実施されてきたという事実を明らかにしたものであり、ヨーロッパの独立した司法は敢然と行政の行き過ぎを指弾できることを示している。
ECJの判決
訴訟内容について説明しよう。2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、EU理事会はアーヴェンとフリードマンの名前を「制限措置」(制裁)リストに掲載し、資金と経済資源を凍結した。同理事会は翌年9月に採択した措置により、二人のリスト入りを維持した。 リストへの収載理由は二人が同じく制裁対象となっている人物やウラジーミル・プーチン大統領と関係があるためだと主張している。理事会によると、彼らはプーチンに物質的または金銭的な支援を提供し、ウクライナの領土保全、主権、独立を損ない、脅かす行動や政策を支援したというのである。 これに対し、アーヴェンとフリードマンは、理事会が提出した証拠は信頼できるものでも信憑性のあるものでもなく、理事会の評価は誤っていると主張してきた。 ECJ一般法院は、二人の要求を支持し、最初の法律と2022年2月28日から2023年3月15日までの制裁リストを維持する法律の両方を無効とする判決を下した。当初の措置に記載された理由はいずれも十分に立証されたものではなく、したがって、二人を制裁リストに掲載したことは正当化されないと判断したのである。 同法院によれば、理事会が提出した根拠は、アーヴェン、フリードマンとプーチンまたはその側近との間にある程度の近接性があることを立証するようなものではあっても、ウクライナの領土保全、主権、独立を損ない、脅かすような行動や政策を支持したこと、クリミア併合やウクライナの不安定化に責任を負うロシアの意思決定者に物質的または経済的支援を提供したこと、あるいはそれらの意思決定者から利益を得たことを示すものではないという。 つまり、欧州理事会の二人に科した制裁は根拠のない誤りであったことになる。 なお、決定通知から2カ月と10日以内であれば、法律上の点のみに限定して、司法裁判所に上訴することができるため、まだ確定判決ではない。