笑わない人は歯の寿命が短い!? 歯医者で使われる「笑気麻酔」とは? 歯科医師が解説【笑いと歯の関係性】
笑うと唾液の免疫力や口周りの筋力がアップ
2002年に早稲田大学のグループが報告した研究では、94人の講演参加者に対して落語を鑑賞してもらい、その前後において唾液で免疫の役割を担う分泌型免疫グロブリンA(以下、s-IgA)の濃度などについて比較・検討しました。 その結果、落語を鑑賞した後では前に比べ、s-IgAの濃度だけでなく分泌率も有意に上昇することが明らかになりました。つまり、面白い落語で笑うことによって口腔内の細菌やウイルスなどの外敵に対して働く免疫力が高まるため、細菌感染症である虫歯や歯周病の予防に笑うことが有効であることが示唆されたのです。 ところで、笑うという顔の動作は表情筋という表情を司る筋肉を存分に活動させ、口唇や頬など口周りの筋肉を鍛えます。口周囲の筋肉が強くなれば口唇を閉じる力が強まり、話す、食べる、嚥下する(えんげ、飲み込むこと)といった口周辺の機能を正常に作用させることにつながります。 ですから、笑いは口腔二大疾患である虫歯・歯周病の予防だけでなく、口が正しく働くためにもとても重要なものなのです。
思わず笑ってしまう?「笑気麻酔」
もう一つ、歯科と関連深い“笑”で忘れてはいけないトピックスがあります。 皆さんは「笑気」という面白い名前のガスをご存じでしょうか。 その名前の通り、吸うと気持ちが良くなって思わず笑顔になってしまうことから名付けられたそうですが、このガスを使用した麻酔鎮静法が歯科治療に恐怖心のある子どもなどに効果的だとして、一部の歯科医院で利用されています。 この「笑気麻酔鎮静法」は、麻酔とは言っても注射するのではなく、マスクを鼻の上にのせて笑気ガスを吸い込むだけなので、子どもに対する負担がほとんどありません。鎮静法ですので痛みが全くなくなるわけではないですが、痛みを和らげることが可能です。笑気の成分は亜酸化窒素(N2O)ですが、これを吸い込むことで緊張や恐怖心が和らぎ、心身の負担を軽減してリラックスした状態で治療を受けることができます。