妻夫木聡「子育てを経て自分自身がどう変わるか…楽しみにしています」
シリアスからコメディーまでさまざまな役を演じ、映画「悪人」(2010年)、「ある男」(2022年)で「日本アカデミー賞」最優秀主演男優賞を受賞。 好青年から大人の男性へ――。演じる役柄も変わり、40代に入った妻夫木聡に、20代との違い、芝居に対して思うこと、これからの自分に期待することを聞いた。 【動画】妻夫木聡×渡辺謙「生きとし生けるもの」本編
“みんなが求める妻夫木聡ではないところに行ってほしい”という期待はある
――純粋な好青年のイメージが強かった20代を経て、キャリアを重ねながら30代、40代で大人の俳優に。妻夫木さんは、ご自身の変化をどのように感じていますか? 「変化か…どう変化しているんでしょうね?(笑) でも、そこさえも意識しなくなったことが、自分自身の変化なのかもしれません。 20代、30代の頃は、現場で“こうあるべき”“こうならなければいけない”と考えてしまうことがたくさんありました。知る、そして体験する…役作りの一環でいろいろなことを勉強することは今も変わりませんが、そこに縛られず、目の前で起きていることを大切にする。そういう意識を自然と持てるようになってきたかなとは思います」 ――連続ドラマ初主演作「ブラックジャックによろしく」(TBS)から20年…。仮に今、同じような命と向き合う役を演じるとしたら、アプローチも変わってくると思いますか? 「その時は必死でそれしかできなかったんですけど、今なら、命とどう向き合うか、医者とは何か、人間とは、生きるとは、とか考えずに芝居すると思います。そんなことを考えながら芝居をしていたら、嘘になってしまうから。もっとその役として目の前で起きていること…例えば、その時々に感じる心の機微であるとか表情の変化というものを大切にしたいので」 ――役と同化するということでしょうか? 「でも、そういう経験ってなかなかないんですよね。例えば、映画『ジョゼと虎と魚たち』(2003年)は、脚本を当て書きしてくださったこともあり、どこか自分と共通する部分を感じましたが、こういう感覚は本当に少ない。『ジョゼ』も当然、演じた役が僕そのものというわけではないんですけど、作品の中に入り込んだというような感覚があったんですよね」 ――40代に入った今、芝居をする上で求めるもの、望むものは、そうした感覚? 「結果、『ジョゼ』でも演じていたんですけど、僕としては“演じていた”という言葉よりも“生きていた”という言葉の方が近い感覚だったんですよね。だから心のどこかで僕は、いつもこういう感覚を求めているのかもしれないです。役と共に常に生きているという感覚…。この役から離れるのが寂しい、それくらい役と共に生きるということを望んでいるのかもしれません」