「保健師+歯科医師+看護師チーム」在宅避難者の健康支える 藤枝市訓練 災害時に人材そろう? 見えた課題
災害時に自力で避難できないなどの理由で壊れた家で避難を続ける在宅避難者への支援は能登半島地震でも課題になった。1日に静岡県内で開かれた地域防災訓練では、藤枝市が在宅避難者の健康課題の把握や新たな支援が必要な要配慮者を把握するための訓練を行った。保健師だけではなく歯科医師、看護師と連携し、被災者の自宅を訪問して支援の必要性を調査した。参加者は多職種連携の重要性を認識する一方で、被災後の早期の体制構築や受援調整の課題も見えてきた。 「薬は足りていますか」。保健師ら4人一組の「地域健康管理チーム」が同市岡部町の70代の男性宅を訪問した。発災後1週間以上が経過した想定で、保健師が持病の有無や体調の変化を聞き取り、調査票に記入していった。同行した看護師が血圧を測り、歯科医師が水を使わずに歯みがきができる歯科用品を手渡して継続的な口腔[こうくう]ケアの重要性を啓発した。 これまでの訓練では、救護所の運営や応急手当て方法の確認が中心だった。市は「災害時健康支援マニュアル」を整備しているものの、在宅避難者の健康支援訓練に取り組むのは初めて。能登半島地震で支援に入った職員の経験を踏まえて健康推進課と地域防災課が計画した。保健師だけではなく、他の専門職との協力を想定したチーム編成としたのが特徴的だ。 訓練に参加した訪問看護ステーションの看護師石神弘美さん(63)は普段の仕事でも、1人の利用者に対してさまざまな専門職が携わっていると実感する。「災害時にも多職種のチームで活動できる方がいい」と振り返る。被災者の支援に関わる団体も多様になっている。複数の団体が似たような質問を繰り返すことで被災者への負担が増すのを避けるためにも専門職の連携は必要だ。 一方で、市健康推進課の下田良子係長は「多職種チームが組めるかどうかは発災してみないと分からない」と話す。南海トラフ地震の場合は、職員や地元の医療、福祉関係者も被災し、地域の人的資源での対応はできない。「どういった外部支援団体が入ってくるかによって体制は変わってくる」とみる。 外部支援を受け入れるための受援体制や活動で把握した要配慮者の情報集約方法にも課題はある。同課の伊久美佳代課長によると、現行のマニュアルでは「調整チーム」が情報を集約することになっているが、体制が具体的に決まっているわけではない。必要な支援に迅速につなげたり、災害対策本部を通じて追加の支援の派遣を要請したりするためにも「的確に被災者のアセスメントを行うだけではなく、聞き取った情報を集約するための会議体や場を設ける必要がある」と伊久美課長は強調する。支援団体が多様化したことを踏まえてマニュアルの見直し、体制強化につなげていくという。
静岡新聞社