史上4人目の日本人TED登壇者、285億調達ベンチャー・オイシイファームCEOが語るTEDの舞台裏
大観衆を前にスピーチするのは絶対嫌だった
キュレーターの1人から初めてオイシイファームにコンタクトがあったのは、2022年のことだった。 「会社の公式サイトの問い合わせ欄から登壇の打診が来たんです。最初は全くピンと来なくて、お金を払えば登壇できますよという類いだと思って無視していました(苦笑)」(古賀氏) その後も何度も連絡があったため、ひとまず返事をしてやり取りしたところ、かの有名なTEDであることが判明。ブランディング部門のヘッドは大喜びしたが、古賀氏本人は気が重くなったという。 「実はパブリック・スピーキングがものすごく苦手で。大観衆を前にスピーチするなんで絶対嫌だったので、断りたいと言ったんです」
タイミングの悪さを理由に1度は辞退
TEDに出演することになると数カ月はその準備に力を注がなければならない。それを避けたい理由もあった。 「ちょうどシリーズBの大型資金調達が佳境に差し掛かっていたんです。そこに集中したかったし、(2024年に発表した)メガファームの稼働も見えていました。TEDには基本一生に一度しか登壇できないので、その2つを発表できない段階で出るのはタイミングとしてどうなんだろうと」 もちろん発表の準備ができたタイミングで再び声がかかる保証はない。それでも、会社としての優先順位を理由に辞退した。
社員に説得され、2度目の打診で登壇決意
それから約1年が経った2023年夏。忘れた頃に再打診の連絡が来た。登壇したくなかった古賀氏は、周囲にしばらく黙っていたという。 「でもマーケティングやブランディングのチームが当時本当に頑張ってくれていたので、さすがに悪い気がして、ブランディング部門のヘッドに伝えたんです。今年もまた来たよって」 2024年であれば、資金調達もメガファームについても発表できる。タイミングは完璧だった。しかし苦手だからできれば出たくないと古賀氏は消極的だったという。 そんな古賀氏に、ブランディング部門のヘッドはTED登壇の効果を力説した。 「『私たちが普段マーケティングにどれだけお金をかけているか知ってる?TEDは無料で、しかもものすごい宣伝効果があるんですよ』と。最後には『ボスがTEDに登壇するのは私の夢なの!(前職の)LululemonのCEOですら叶わなかった夢だから、とにかく私のためにやってくれ』と言われ、仕方なく受けることにしました」