再設計されたオフローダーのアイコン「メルセデス G580 with EQ Technology」が日本デビュー
メルセデス・ベンツGクラスのBEVモデルである「G 580 with EQ Technology」がいよいよ日本でも発表され発売となった。G Worldと名付けられた発表会の模様を、大林晃平がレポートする。
今年の8月、久しぶりに訪れた西海岸屈指のリゾート地にあるホテルの駐車場で、生まれて初めてメルセデスG 580 with EQ Technology(以下G 580と略す)を見かけた。残念ながらそこに宿泊したわけではなく、単に訪れただけではあったが、ロールスロイスのスペクターやマクラーレンP1などが無造作に置かれた駐車場にG 580は停まっていた。イメージカラーのグレーのボディカラーと四角いスペアタイヤボックス風の小物入れ(充電コードなども納めることができる)によって、それが BEVのゲレンデヴァーゲンであることは一目瞭然であったが、なるほどこういうシチュエーションで、こういうクルマたちに交じって使われる車なのだということを、妙に理解した瞬間であった。
それからちょうど二か月後の10月23日、お台場の特設会場に新メルセデスベンツ日本社長であるゲルティンガー剛氏を助手席に乗せて現れたG 580は会場内でいきなりGターンを披露した。G 580との話題で必ず触れられるこの「コマのようにその場で360度回ることのできるターン」は、4輪それぞれに独立したモーターを備え、それらを個別に制御することで初めて可能になる荒業である。
舗装路で使ってはいけないことと上限が2回転であることに加え、一般公道上では使用してはいけません、という決まりになっており、じゃあいったいどこで使うのか実に使用頻度の低そうな仕掛けなのだが、パーティー会場に乗り付けてエントランス付近でぐるっと回って注目を浴びる、というような使い方が想定される……というのは穿った考えすぎるかもしれないが、とにかくタイヤにとっても過酷であることは確かで、デモンストレーションした後の車輛のタイヤ(特にリヤタイヤのターンした外周の)からはかなりの数の削りカスが発生しており、かなりタイヤにとっては過酷な使い方であろうことは想像がつく。
というのも、G 580は530㎞の走行可能距離と、432kw/587PSの馬力と1164Nmのトルクを発生させるために、116kWhのバッテリーを搭載し、総重量3120㎏となっている。このうちバッテリーの重量は800㎏といわれているが、これはG 450 dよりもざっと600㎏も重い。そんな重量でGターンをやられた日には、タイヤにとっては身を削られる思いであろう。そんなGターンではあるが、周囲に障害物があった場合、センサーにより自動的に回転は停止する安全策もほどこされているとのことだ。 しかし、メルセデス・ベンツグループGクラスプロダクトマネジャーのトニ メンテル氏によれば話題のGターンよりも、もう一つの武器であるGステアリングの方が重要である、という。これは内輪のリヤタイヤ一輪のみをロックさせ、ほかの3輪のみで強引に小さく旋回するという技なのだが、通常は曲がり切れないカーブでもクリアできる装備となっている……のだが、こちらも公道で使うことは禁じられている。