甘い投資話に「もうけたい気持ちが勝って…」 SNS型詐欺の被害男性語る アプリで架空利益、泥沼に
全国で被害が急増しているSNS型投資詐欺。約900万円をだまし取られた広島県内の50代の会社員男性が中国新聞の取材に応じ、手口や当時の心境を語った。架空の利益を示すアプリなどで説得力を持たせ、次々と現金を振り込ませる犯人。男性は消費者金融への借金も残り、「もうけたい気持ちが勝ってしまった」と悔やむ。 【写真】「あなたを騙してしまいました」「私はすでに休暇中です」投資は架空だったと告げる犯人からのメッセージを見る男性など 「少額の投資で1千万円稼げます」。4月中旬の朝、男性が出勤前にスマートフォンでフェイスブックの投稿をチェックしていると、投資による資産形成を促す広告が表示された。 連日流れる物価高のニュース。定年も迫り、老後の生活への不安を感じていた。「少しでも家計の足しになるかも」と広告をタップした。100人くらいが参加するLINE(ライン)のグループチャットに招待され、投資家のアシスタントを名乗る女性の連絡先が示された。 グループチャットではメンバーが口座の取引明細の写真を投稿し、投資の成果を披露し合っていた。「簡単にもうかるんだ」。女性と個別にラインでやりとりを始め、原油の先物取引を勧められた。「10万円から試みてはいかがでしょうか。毎日5千円の収益も可能です」。
「やめると国の機関から罰金がある」
「10万円なら失敗しても痛くはない」。女性に指定された金融取引のアプリをインストールし、ネットバンキングで指定口座に10万円を入金した。女性に言われた通りに取引すると、アプリ上に表示される資産が10日で2倍になった。もうかると信じ、消費者金融から200万円を2回借りて入金。アプリ上では順調に増え、資産は900万円に膨らんだ。 投資を始めて1カ月がたった6月中旬、女性に出金を申し出ると事態は暗転する。「投資をやめると国の機関から罰金がある」と120万円を要求された。不審に思ったが、「罰金」を払っても利益は得られると思い直し、振り込んだ。 だが、資金は引き出せない。「出金の手数料が必要」「国際銀行に保証金の支払いを」…。3、4日おきにラインで40万円から100万円台の振り込みを求められた。男性は「金を取り戻さないと借入金が返せない」と焦り、さらに借金して応じ続けた。
「投資は架空でした」
7月上旬、会社から帰宅中の男性のスマホにアプリのカスタマーセンターを名乗るアカウントからメッセージが届いた。「投資は架空のものでした」。既に900万円を投じていた。「もう終わりだ」。道中で同僚に話しかけられたが、ぼうぜんとして反応できなかった。翌日、警察に相談し、詐欺と判明した。 途中でやめておけば。振込先が毎回違う点を怪しんでいれば―。引き返すタイミングは何度もあったと男性は今では思う。「SNSの運営会社は、怪しいアカウントを規制するなど対策を強めてほしい。でも欲を出した自分が悪かった」。内緒にしていた家族には何度も謝った。専業主婦だった妻は、仕事を探し始めたという。
中国新聞社