業界も人材も育てるには? 大学をハブに企業と若手の架け橋に【TGS2024】
採用課題の解決やゲーム産業の長期繁栄につながる具体的な手だてはあるのか。TGSフォーラム「今求められるゲーム産業人材育成の手立て」では、大学や専門学校でクリエイターの育成に携わる有識者が議論を交わし、話し合った。 【関連画像】フォーラム中の会場風景 ●「ゼロイチ」人材の必要性 生成AIなどの技術の高度化や若手クリエイターの働き方の多様化によって企業と若手の関係に変化が生じ、時代に合わせた人材育成の必要が高まっている。 ゲーム教育ジャーナリストで東京国際工科専門職大学講師小野憲史氏は、講師とジャーナリストとしての知見を踏まえ、ゲーム業界の現状を分析した。国内ソーシャルゲーム市場の成熟、ゲームエンジンの普及による分業化と社内開発力の低下などによる停滞と、海外ゲームの浸透といった「次の成長市場が見つからない」(小野氏)状況下にあると話した。 人材育成の可能性についても考察し、大学や専門学校などの失敗が許容される環境において高速でPDCAを回し、ゲーム開発にとどまらないメタ認知能力を備えた「ゼロイチ人材」の育成の必要性を提唱した。 小野氏はさらに東京国際工科専門職大学での取り組みを紹介した。産業界と連携し、授業の3分の1以上が実習・実技で40パーセント以上が実務家教員を占める。ゲーム会社の中で新しい提案ができる人材の育成を目指しているという。 ●優秀なクリエイターに来てもらえるように ゲームクリエイターズギルド代表取締役の宮田大介氏は、元ゲーム開発者としての自身の経験からクリエイターのキャリアに課題を感じてきた。そこでゲームクリエイターとゲーム会社をつなぐ共創コミュニテイーとしてゲームクリエイターズギルドを始めた。 中小企業では若手の育成コストをかけるのが難しいこともある。そこで産学全体のノウハウを還流させ、業界全体でクリエイターを育成する環境をつくる。職業環境としての魅力やゲーム制作の面白さを発信し、「ゲーム好き」以外のクリエイターにもゲームという媒体を選んでもらう。そうして優秀な若手クリエイター、さまざまなアーティストに参加してもらい、新しいエンターテインメントとして進化、変容していけるのではないかと問いかけた。 宮田氏は通年型の作品発表とフィードバッグ・改善のサイクルを産む場として「ゲームクリエイター甲子園」を主催。「『コンテスト』から『コミュニティ』へ」を掲げる。単に順位をつけて学内で完結するのではなくトライアンドエラーを繰り返しながらどうプロの活動へとつながっていくか。さまざまなプロクリエイターに作品に触れる場を提供。世界で活躍しているクリエイターがどんな技術、スキルを持っているかを若年から背比べをできるようにした。