『水ダウ』放送作家が語るバラエティ番組における“いじり”の変化、順応上手な芸人はアノ人
テレビにおける「いじり」が変わってきている。昭和から平成にかけてのバラエティ番組では「いじり」は当たり前のように見る光景だった。だが、令和になり、ポリティカル・コレクトネスやハラスメントへの意識の高まり、またSNSの発展などもあり、「いじり」が炎上につながるケースも多くなった。 【関連画像】こんな会社に入りたいか?『六人の嘘つきな大学生』俳優の演技と監督の演出力 フジテレビ系情報番組『めざましテレビ』の公式YouTubeチャンネル内に7月に投稿された動画内で交わされた、新人アナウンサーと先輩アナウンサーのやり取りがSNSで賛否を呼んだのは記憶に新しい。“愛あるいじり”と擁護する人もいたものの、「いじめのよう」と指摘する声も上がった。 いじりに関するトピックは他にもある。10月27日の『ボクらの時代』(フジテレビ系)に出演した芸人・いとうあさこさんは、視聴者からの批判や同情が入るため、共演者からの“ババアいじり”がなくなった現状を嘆いた。 “いじり”が転換点を迎えている昨今、今後どのように変化していくのだろうか。『水曜日のダウンタウン』(TBS系)をはじめ、人気バラエティ番組の放送作家として活躍している大井洋一氏に話を聞いた。 まず『めざましテレビ』の動画が炎上した背景として「いじりは両者の信頼関係がわからないと、第三者からはネガティブに捉えらかねません。当該動画はその辺りがよくわからなかったのでは」と説明を始める。 「いじられている方も内心は”おいしい”と思っており、愛あるいじりだった可能性も十分あります。とはいえ、当該動画はあくまでCM中のやり取りを映しており、言い換えれば“オフショット”。オンエアを意識したものではなくプライベート映像に近く、バラエティ的なノリとは素直に視聴者に見てもらえません。そのうえでアナウンサー間の関係性がイマイチ伝わり切らなかったため、『いじめ』や『ハラスメント』という指摘が寄せられたのでしょう。先輩アナのいじり方よりは、そういった動画を投稿した人の判断が甘かったことが要因と考えられます」 とはいえ、「単純に面白くなかったことが一番だとは思います」といじり方が炎上に大きく影響していると続けた。 ちなみに、容姿いじりと言えば、昨年開催された『M-1グランプリ』(ABCテレビ・テレビ朝日系)の敗者復活戦で“ハゲネタ”全開のネタを披露して勝ち上がったシシガシラが思い出される。一般人の審査員によって投票されたため、“時代”を鑑みればキンキンに滑っていてもおかしくない。にもかかわらず、シシガシラが勝ち進んだ理由とはどう見ているのか。 「ネタ(漫才)だから許容された部分が大きいです。ネタは作品ですので、見る側も見る姿勢になる。もちろん、ひどいネタであればひんしゅくを買います。ただ、そこをかいくぐり、ウケるネタを作ったシシガシラが素晴らしかった。また、ハゲている人に対して、ただただ『ハゲてるな!』といじるのではなく、いろいろな角度から笑えるようにいじっている。ちょっと漫才のレベルが違います。他にも、『容姿いじりに厳しい視線が向けられているにもかかわらず、ハゲいじりをするネタをやった』ということがカウンターになり、よりウケた部分もあったかもしれません」