過熱する中学受験で、注目を集める「公立中高一貫校」現役塾講師が明かす“メリット”と“やってはいけないこと”
入試に向けた「正しい学習」とは
公立中高一貫校の入試で求められる適性検査への対策について、多くの保護者は早い時期から適性検査にフィットした学習を行うことが有利だと考えがちです。しかし、このアプローチは逆効果になるリスクがあります。 適性検査の出題範囲はズバリ、「日常」です。 出題範囲が広域に及ぶため、問題のパターンは無限に生成されます。私立中学受験や高校受験のような体系的なカリキュラムは存在しません。 多くの適性検査対策塾は苦肉の策として、過去問の出題傾向を分析し、カテゴリ別に分類されたテキストを用いた演習と解説に莫大な時間を費やします。 指導者目線から言わせてもらうと、歴史の浅い適性検査型のテキストは、カリキュラムに体系や思想が乏しく、場当たり的な印象を持ちます。私立中学受験や高校受験のカリキュラムと比べて貧弱なのです。 一方、私立中学受験や高校受験のカリキュラムは、長い歴史の中で洗練され、体系化された叡智の結集です。 指導の力量差や個々の習得スピードを差し引いても、手順とタイミングさえ誤らなければ、着実に学力を積み上げることができます。 適性検査対策のカリキュラムは、体系的な教科学習になっているとは言い難いものです。学力が十分に備わっている子の試験慣れにはなりますが、費やした時間や労力の割には、ベースとなる学力の向上につながりにくいという致命的な欠点を感じずにはいられません。 その穴埋めするのが指導者の役割ですが、残念なことに、テキストの問題を解き、模範解答をなぞるだけの授業になってしまうことが多く、適性検査が求める汎用性の高い学力にまで持っていける講師はごく少数です。 『二月の勝者』(高瀬志帆著・小学館)という中学受験を題材にしたマンガでは、この点を鮮明に描写しています。第11巻で、最難関私立中である開成を目指す島津君が、都立中高一貫校の最難関である大石山(注:都立小石川のこと)の適性検査が、難関私立中学入試と本質が同じであることを見抜きます。 必要な知識量や準備期間の長さは比較になりませんが、難関私立中学と公立中高一貫校は、丸暗記では太刀打ちできない力を問うという点で共通しています。 上位私立中学受験層は、受験勉強の過程で自然と公立中高一貫校の求める学力が養われます。そして、適性検査対策を半年間した程度で合格しています。 逆説的に聞こえるかもしれませんが、公立中高一貫校を目指すなら、早いうちから適性検査に特化した対策はしないでください。 小6の2学期までは、適性検査を意識しない、広い意味での教科の学力を蓄えるようにしましょう。