過熱する中学受験で、注目を集める「公立中高一貫校」現役塾講師が明かす“メリット”と“やってはいけないこと”
・習い事と両立している合格者が多い
ある都立中高一貫校の入学者アンケートによると、多くの入学者が英語、プログラミング、スポーツ、ピアノといった塾以外の習い事と両立していたそうです。自由な時間が制限されがちな現代の私立中学受験と比べると、「牧歌的」な受験スタイルが残っています。 都立小石川中等教育学校に進学したある生徒は、小学校時代に変形菌の研究に没頭し、自宅で100種類以上の変形菌を育てる「子ども博士」として注目されました。この生徒に象徴されるように、学習意欲は旺盛であるものの、受験勉強以外の興味や才能の開拓に時間を取りたいと考える家庭が、公立中高一貫校を選択する傾向にあります。それを示す二つの証拠があります。 一つ目は、学問コンテストでの入賞者の多さです。 都立小石川を始めとする公立中高一貫校は、数年にわたって国際物理オリンピック、情報オリンピック、地学オリンピック、化学オリンピックなどの学問コンテストで多くの入賞者を輩出しています。都立武蔵高等学校・附属中学校は数学オリンピックで、都立桜修館中等教育学校は地理オリンピックで入賞者を出しました。 他県でも、府立洛北高等学校・附属中学校(京都府)、宮城県仙台二華中学校・高等学校(宮城県)、県立岡山大安寺中等教育学校(岡山県)といった都市部の進学校化した公立中高一貫校が顕著な実績を挙げています。 もう一つの証拠は、東京大学の推薦合格者の増加です。 2024年度の速報値では、都立中高一貫校10校から6人の合格が出ています。東京の私立中高一貫校ですら181校から16人の合格にすぎません。 2016年に始まった東京大学の推薦入試では、高い学力だけでは合格に至りません。 学問への熱意を示す実績が必要とされます。合格者の体験記を読むと、小学校時代の「余白の時間」を、専門性を深める学びに費やしていた人が多いのです。 “小学生の頃から鳥類の研究に打ち込んでいた”“自宅でビオトープを作り研究に没頭した”“素数の研究に挑戦した”“Webレッスンや洋書で語学力を養った”など、公立中高一貫校は、早熟で学習意欲旺盛な子どもが、長期間受験勉強で日常生活を縛られることなく進学校に入学できる可能性があります。私が認める公立中高一貫校の最大の利点は、この点にあります。偏差値や大学合格実績という、上辺だけの評価では見落とされがちな視点でしょう。