香りや味を楽しめ、空間を浄化してくれる、植物の驚くべき能力とは?
香りや味を楽しめる以外に空間を浄化してくれる働きも。
中村 私は嗅覚を使う仕事ですが、古谷さんは味覚を通じて植物と関わっているのがおもしろいなあと思います。 古谷 でも私も森に行くと、まずは植物の香りをかいで、いい香りだなと思ったものを採取しています。たとえば東北地方の高山地帯に生えているオオシラビソ。モミの仲間で別名アオモリトドマツです。葉っぱをとりたてのときはカボスの香りがするんですが、しばらくして乾燥するとベリーの甘い香りになるんです。ちなみに秋田では不吉なことがあると乾燥させたオオシラビソを燃やす習慣もあるそうです。 中村 モミには消臭作用もありますしね。植物が浄化に使われることは海外でも古くからあるみたいです。たとえばローズマリーは邪を払うとされていて玄関先に植えられていたり、教会で使われていたりしますね。 古谷 中村さんはヨーロッパの植物にも詳しいと思いますが、私の印象だとヨーロッパのものは香りも味も強い一方で、日本のものは繊細だけれど比較的地味だなあと。中村さんはどんな違いを感じますか?
中村 精油に関していうと、日本のものは底力があるというか、時間が経っても香りの印象が変わらないものが多い気がします。あと、日本に長く住んでいる人は、スギやヒノキ、ユズなどの日本の精油の香りを「懐かしい」「安心する」と感じるみたいです。香りは記憶と強く結びつきますから。一方、確かにヨーロッパの精油は概して香りにパンチがありますが、比較的短時間で印象が変化するように感じます。 古谷 南フランスのハーブ農家にも何度も行かれているとか。 中村 取材で度々行っていて、行くたびに発見があります。たとえばラベンダーを育てている小規模農家では、ラベンダーだけの畑にせず、あえて他の種類のハーブと混在させているんですよ。というのも、植物の香り成分は身を守り、子孫を残すためのものなので、過保護に育てると成分が減ってしまうこともあるんです。だからいろんな植物と隣り合わせて強くさせるとのこと。それを説明してくれたマダムが「人間と一緒よ」と。植物を通じて人生を教えてもらうこともありますね。