南海トラフ臨時情報に翻弄された「日向国」、日向坂46フェスが照らす…経済効果30億円
メンバーたちは「宮崎の方々と関わっていく中で、本当の故郷のように特別な気持ちを抱くようになった」と感謝の気持ちをサイトにつづった。
♪聖地化
「宮崎中が日向坂46の『聖地』になった」。官民を挙げた協業の成果を評価するのは、宮崎大の土屋有准教授(経営情報学)だ。
会場でファンら約8000人にアンケート調査を行ったところ、3人に2人がフェスを機に宮崎を初めて訪れたと回答。居住地は東京都が21・2%、神奈川県11・3%、埼玉県6・6%――と続き、遠方からの来訪者が目立った。
宿泊客の多さも特徴で、2泊以上滞在すると答えた人が約7割に達した。「ポスター効果」もあって1人が訪ねる市町村は平均で2・32市町村に上り、すべてのポスターを見にいくと答えたファンもいたという。
調査結果を基に、フェスによる宿泊客を延べ9万人超、日帰り客を5000人弱と見積もり、ホテルや飲食店などで29億900万円の売り上げ増に寄与したと分析する土屋准教授。「スポーツに加え、音楽イベントも継続的に開催できれば、新たな観光の柱になる可能性がある」と話す。
漫画観光の目玉に~
大分「進撃の巨人」熊本「ワンピース」
地元にゆかりのある著名人らと手を組み、新たな観光の目玉を作ろうという動きは各地に広まっている。
高い壁に守られた都市で暮らす人類と巨人との戦いを描いた人気漫画「進撃の巨人」で知られる漫画家・諫山創さんの出身地、大分県日田市。主人公「エレン」らの銅像がある広場は、壁に見立てたダムを望む場所にあり、ファンの「聖地」になった。市は2021~23年度の経済波及効果を55億円以上とし、「コロナ禍後の観光の復活に大きな力をいただいている」とする。
大ヒットした漫画「ワンピース」の作者・尾田栄一郎さんの故郷、熊本県も16年の熊本地震を受け、尾田さんからの寄付金の一部を充てて県内10か所にキャラクターの像を置いた。尚絅大(熊本市)の研究チームによると、県庁前にある主人公「ルフィ」の像には、19年の1年間だけで5万5000人が訪れたという。
◆日向坂46=アイドルグループ「けやき坂46」として2016年に活動を始め、19年から今の名称に。「AKB48」を手がけた秋元康氏がプロデューサーを務め、NHK紅白歌合戦にも出演した。メンバーには九州出身者もいる。