【3・11から13年】羽生結弦が東日本大震災へ込めた思いと希望をもらった被災地のアイスショー、大女優・大地真央さんとのコラボで見せた新境地とは
「陸上と氷上のギャップを生まない」
冒頭では、公演名にもなっている演目を情感たっぷりに舞い、大トリを飾る演技では、希望をコンセプトとした単独での新プログラム「ダニーボーイ」をピアノの旋律に乗せて演じた。中でも、前半のハイライトであるスペシャルゲストの女優・大地真央さんとのコラボレーションが実現した「カルミナ・ブラーナ」では、表現に一層の幅を広げた舞を演じた。 大地さんが演じる運命の女神に、自由で無垢だった少年が翻弄(ほんろう)されながらも抗いを見せ、やがて全てを受け入れて前を向いて進んでいく壮大なストーリーの熱演には、被災地への思いが込められていた。 「カルミナ・ブラーナに関しては、(前半部分は)まだ世界をきちんと知らない無垢な少年が、その中で幸せを感じながら生きていて、冒険をしたり、草花に触れてみたり(ということを表現しています)。そんな凄く無垢な少年が成長していくことによって、やがて運命の女神が現れて、運命にとらわれていきます。自由に無垢に動くだけじゃなくて、運命の歯車に左右され、自由には動けなくなっていきます。しかし、最終的には、その運命も全てを受け入れて、運命そのものと対峙しながらも、自分の意志で進んでいくというストーリーになっています。 津波や震災、今は能登半島(地震)のこともそうですが、人間の力ではどうしようもない災害や天災があります。僕はこのストーリーの中に、苦しみを感じたとしても、抗いながらも受け入れて進んでいくというメッセージを込めたいと思いながら滑っています」 羽生さんは自らが被災者でありながら、いつも「もっとつらい経験や悲しい思いをされたり、命を失った方々やご家族がたくさんいらっしゃったりします」と他者への気遣いを忘れない。そんな中で、自らが祈りや希望の思いに込める思いをどう表現するかに頭を巡らせたのだろう。
今回のプログラムは、2人の振付師が担っているという。 「前半の部分、大地さんが出る前まではシェイリン・ボーンさんに振り付けをしていただいて、大地さんが出てきた後は、大地さんが振り付けをしてもらっている方にお願いをしました。いわゆる舞台の振り付けをされている方です。そういう背景もあって、前半部分のフィギュアスケートの振り付けで滑っている自分と、陸上である舞台の振り付けで滑っている自分がいるので、前半と後半でギャップが生まれないように意識して滑り込んできたつもりです」 陸上の振り付けに氷上とのギャップを生まないとはどういうことか。 「陸上での振り付け(を氷上で演じる上)では、どうしても、上下というか、前後の動きですかね、奥行きがなくなってきたり、動きそのものが小さくなりがちになってしまいます。陸上の振り付けだからこそ、逆にフィギュアスケート(氷上)に落とし込んだときに、もっとこういうふうに表現すれば陸上っぽくもなれたり、逆にフィギュアの良さが出たり、フィギュアってこういうふうに表現できるのではないかなどと、色々と頭の中で計算をしながら作っています」