「鼻出しマスク」でまさかの反則負け3回 将棋の日浦八段は、それでもなぜ鼻出しにこだわったのか 「脳へのダメージ」と「排除する空気」の深刻さ
「私は連盟の奴隷ではない。子どものケンカじゃないんだ」 ▽「対局放棄と見なす」 翌7日、前述した通り、3回目の反則負けとなった。連盟は日浦さんに懲戒処分を出す前段階として、「倫理委員会」に判断を求めた。 倫理委員会が設けた弁明の場で、日浦さんは改めてマスクの科学的根拠に関する疑念を伝えた。その上で「マスクの強要は人権侵害だと思います」と主張すると、委員として出席していたある弁護士はこう切り捨てたという。 「人権侵害というのは政府がやるものですよ」 日浦さんには意味が分からなかったが、自分たちは政府の要請に従っているだけだと言い訳をしているように感じた。 2月13日、倫理委員会の答申を受けた理事会は、3カ月の出場停止処分を決定した。 日浦さんが受け取った通知書によると、処分の理由としておおむねこう書かれていた。 「マスクの着用義務、立会人の処置および裁定に従う義務、棋士の公務に違反し、連盟の目的に反する行為をした」「実質的な対局の放棄を行った」
日浦さんが繰り返し訴えたマスクの感染防止効果などの根拠に関する見解はひと言も触れていない。やむなくしていた「鼻出しマスク」も全力で対局に臨むためだったが、「放棄」と見なされた。 「連盟は最初から私の抗議を聞く耳はなかった。処分ありきだったのは明らかだ」 ▽鼻出し棋士はほかにも…実は狙い撃ち? 日浦さんには懲戒処分について、どうしても拭えない疑問がある。それは自分だけが「狙い撃ち」をされたのではないかということだ。 日浦さんによると、規定ができた後、「鼻出しマスク」をして対局していた棋士は、日浦さん以外にも何人もいたという。ここでは名前を伏せるが、3人の氏名を打ち明けてくれた。証拠の写真もあるという。そのうちの一人は、日浦さんに反則負けを宣言した立会人だ。 「連盟は、規定を作っただけでチェックまではしていない。それにも関わらず、私の3回目の反則負けの際は、対局相手からの抗議がなくても立会人がいきなり入ってきて反則負けとされたのです」