ゴールド(金)は、なぜ世界で一番人気の投資になったのか?(海外)
10月最終週に、ゴールド(金)の価格は過去最高値をつけた。 世界的な金利低下と地政学的緊張の高まりから、安全資産としての金の魅力が高まっている。 2022年10月以降、金は株式をアウトパフォームしており、証券各社は金価格の上昇が続くと予想する。 2024年、ゴールド(金)の価格が急騰している。10月最終週に金価格は1トロイオンス2772ドル(約41万5800円、1ドル=150円換算:以下同)の過去最高値をつけた。過去7週のうち6週で上昇している。 年初来で金の上昇率は約33%に達し、ハイテク株の比率が高いナスダック100など株式市場全般を10ポイントほど上回っている。 2022年10月に株式の強気相場が始まって以降、金は株式の上昇率を上回っている。YChartsによると、S&P500種株価指数のリターンが約63%であるのに対して、金のリターンは67%である。 こうした高いリターンを受けて、金は世界で最も人気の投資商品の1つとなった。ETF.comのデータによると、金の上場投資信託(ETF)の中で資産運用額(AUM)が最大(780億ドル:約11兆7000億円)のSPDRゴールド・シェアーズ(SPDR Gold Shares)には、過去6カ月間におよそ50億ドル(約7500億円)の資金が流入している。 金の現物も人気だ。会員制倉庫型小売店舗のコストコ(Costco)が自社サイトで金の延べ棒を売りに出すと、常に売り切れる。証券会社のウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo)は、コストコが毎月、最大2億ドル(約300億円)の金の延べ棒と銀貨を会員に販売していると見積もる。金は暴騰しているが、この先もさらに上昇する見通しだ。 では、金に何が起こっているのか見ていこう。
各国中銀の需要
過去数年間、世界中の中央銀行が盛んに金を購入している。ワールドゴールドカウンシル(the World Gold Council)によると、各国中銀は今年上期に過去最高となる483トンの金を購入した。トップ3はトルコ、インド、中国の中央銀行だ。 需要急増の一部は、保有資産を米ドルから分散させたい国によるものだ。「米国による金融制裁や米国債務に対する懸念を受けて、2022年半ばから中央銀行による金の購入が3倍に増加しているが、これは構造的なものであり、今後も続くだろう」と先月ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)はコメントした。 この動向は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以来に見られる。米国が制裁を通じてロシアに最大限の経済損失を科そうとしたためだ。だが、ドル依存度の低い国に対する制裁実施は困難になっており、ドルへの依存度を下げる方法の1つが金の購入なのだ。 エコノミストのモハメド・エラリアン氏は、これは米国が注視すべき動向だと言う。 10月21日付フィナンシャル・タイムズ紙(FT)の社説で、持続的な金の上昇は、中国と「中間勢力」国の動向がさらに長期化していることを表している、と説く。 「約80年間、国際的な枠組みの中核だったドル決済制度の代替になり得るものを模索する意図もある」 ロシアは2022年に米国が広範囲にわたり制裁を科した後、自国経済の全面的な落ち込みを何とか切り抜け、脱ドル化に一部成功した。ロシア経済が脱ドル化しても危機を回避できたことは、他の国々にドル依存度の引き下げに対する自信を与え、最終的にそれが金に追い風になっている可能性がある。 「ここで問題なのは、ドルの覇権的役割の低下だけでなく、グローバルシステムの機能が緩やかに変化していることだ」とエラリアン氏は言う。この状況がさらに深刻になると、実質的にグローバルシステムが分断され、ドルと米国金融制度の国際的な影響力が低下する危険性がある。