「死が目前に迫った人」の話に、どう耳を傾けるか 相手の気持ちを100%理解できなくてもいい
なお、話を丁寧に聴き、相手の伝えたいメッセージをキャッチできたら、言葉にして、相手に返しましょう。もし、その内容があっていたら、相手は「そうなんです!」と頷いてくれるはずです。 たとえば、誰かが「この前、仕事でミスをしてしまった」と話していたら、私なら「この前、仕事でミスをしてしまったのですね」とまずは反復します。肯定も否定もせず、「馬鹿だなあ」などと言ったり、「どんなミス?」と尋ねたり、「他で挽回すればいいよ」と励ましたりもしません。ただただ、相手の言葉を丁寧に反復します。
すると、必ず相手のほうから「電話1本かけて確認しておけばよかった」と、具体的な話をしてくるはずです。このときも、「そうか、確認しなかったのがいけなかったと思ってるんだね」と、相手の気持ちを認めるようにします。 やがて、相手の口から「そうそう!」「そうなんです!」といった言葉が飛び出し、口数が一気に増えます。それが、相手がこちらを「自分の理解者である」と認めたサインです。 苦しみを抱えた人を前にすると、つい良いことを言ったりアドバイスしたりしたくなるかもしれません。しかし、苦しんでいる人は、ただ「相手が、自分の苦しみをわかってくれている」と思えるだけで、気持ちが落ち着くのです。
相手の話を丁寧に聴き、反復すること。相手の苦しみを、共に味わうこと。それが何よりも大切だと、私は思います。
小澤 竹俊 :医師