JR松山駅の新駅舎が開業、「市民の宝物」「末永く愛される駅に」
JR松山駅(松山市)と周辺線路の高架化工事が完了し、新駅舎が29日に開業した。記念セレモニーが行われ、多くの人が愛媛の玄関口の新たな門出を祝った。(脊尾直哉) 旧駅舎から出発する最終列車を見送る鉄道ファンら(28日午後10時45分撮影)
愛媛県によると、高架化事業は2010年に着工し、総事業費は約607億円。駅の南北区間約2・4キロを高架化するなどし、八つの踏切を廃止することで渋滞の緩和を見込む。旧駅舎では出入り口は東側だけだったが、ホームが屋上にある新駅舎では、東西両側にあり、駅周辺の一体化が見込まれる。
記念式典では、中村知事が「(愛媛の)陸の玄関口にふさわしい空間。街の発展にも結びつけてもらえるよう心から期待する」とあいさつ。JR四国の四之宮和幸社長は「新駅舎が従前の駅舎以上に愛され、すてきな記憶を刻める駅になるよう頑張っていきたい」と述べた。
テープカットに続き、新しいホームで出発式もあり、野本明人駅長が「末永く愛される駅を目指し、JR松山駅出発進行」と進行方向を指さし、特急列車を見送った。
駅前には、開業を祝う神輿(みこし)も登場。大勢の市民や鉄道ファンが集まり、祝賀ムードに包まれた。高架下に新設された商業エリア「JR松山駅だんだん通り」(18区画、14店)もオープンした。
鉄道ファンで、開業を祝おうと友達と2人で駆けつけた松山市立中学の3年生(14)は「新駅舎は松山市民の宝物。これから進学、就職と自分の人生と同じように年を重ねていくと想像すると、まるで弟ができた感覚でうれしい」と笑顔を見せた。
駅周辺の再開発では、松山市の野志克仁市長が、アリーナや小規模ホールを備えた多目的施設や、バスターミナルを整備する方針を明らかにしており、市は鉄道高架工事の資材置き場として使われた土地をJR四国から取得する予定。
旧駅舎71年ありがとう、最終列車見送る
旧駅舎は28日夜、71年の歴史に幕を閉じた。消灯式があり、歴代の駅長や市民らがレトロな趣の駅舎との別れを惜しんだ。
旧駅舎は、初代駅舎が1945年に空襲で焼失したことから、53年に2代目として誕生。2000年に改装され、現在の三角屋根のある外観になった。