イズミの九州事業が新局面 西友から69店取得、その狙いは?
地場流通大手イズミ(広島市東区)の九州事業が新たな局面を迎えている。推進力と見込むのは、食品スーパー大手の西友(東京)から取得した69店。福岡県を中心に店舗網を広げるだけでなく、効率的な店舗運営のノウハウ吸収に主眼を置く。食品スーパー事業全体の収益性と競争力を高めるため、重要な足掛かりとなる。 【図版】イズミが西友から取得した九州の店舗数 九州最大の繁華街、福岡市中央区の天神。その約2キロ南の市街地に、スーパーのサニー平尾店がある。イズミが8月に西友から取得したサニーなど69店の一つだ。24時間営業で、西友のプライベートブランド(PB)商品も人気がある。 近くの井出純子さん(89)は「サニーでしか買えない商品がある。いつも開いていて便利」と買い物を楽しんでいた。 店を運営する子会社ゆめマート熊本(熊本市)の河内山英雄取締役サニー事業本部長は「人口が増え、街に活気がある」と手応えを示す。周辺には別のサニーもあるが、店と店が近くても運営は成り立つと受け止める。 イズミは物流センターや、食品加工などを担うプロセスセンターも承継した。取得額は785億円と巨額だが、69店を自前で新規出店した場合の試算1400億円を大幅に下回るとはじく。人材確保が難しい中、業務に精通した従業員約3800人を引き継げるのも大きなメリットだった。 「イズミが変わる瞬間と感じた」。サニー取得を発表した4月の会見で、山西泰明社長の言葉はいつも以上に熱を帯びていた。九州、特に福岡市でのスーパー拡大は長年の課題だったからだ。 イズミは1995年に九州へ進出。ゆめタウンを中心に店を広げたが、人口増が続く福岡市は出店が難航していた。サニーなど69店のうち福岡市内は41店を占める。 ただ、競争は激しい。イオン九州(福岡市)は今春、2026年度までに福岡県内で110店を出すと発表した。さらに、中国地方に出店しているコスモス薬品やトライアルカンパニーも福岡市に本社を構える。 競争力を高めるため、イズミが目指すのはスーパー運営の効率化だ。山西社長は今月15日の中間決算会見で「10年くらいかけて、サニーのビジネスモデルを私たちの事業に全面展開していく」と説明した。サニーの「低コスト運営」のノウハウを取り入れ、食品スーパー事業を、ゆめタウンなど総合スーパーに並ぶ収益の柱に育てる考えだ。 西友は商品の発注を本社が一括し、店では1人のスタッフが青果や精肉など複数の部門を担うケースが多い。総菜は主に工場で調理し、店の業務をスリムにしている。一方、イズミの既存の食品スーパーは店内調理の比率が高くコストはかかる分、小回りが利く。イズミは将来的に、双方の強みを生かした店づくりを目指している。 まずは来年夏ごろまで、西友のサポートを受けながら運営のノウハウや物流網を引き継ぐ方針。三家本達也副社長は「難易度は高いが、実現すれば総合スーパーに次ぐ第2の柱として利益を伸ばせる」と力を込める。263店(8月末時点)から30年度までに目指す300店達成に向けても、今回の買収の成否が鍵を握る。
中国新聞社