マイナー競技が苦境から脱却する方法とは? ソフトテニス王者・船水雄太、先陣を切って遂げる変革
太田氏にアドバイスをもらい演出面も強化。「見るスポーツ」としても価値向上を
さらに船水は、観戦者にとっても価値のある大会にするための取り組みも始めている。 「ソフトテニスはまだまだ『見るスポーツ』として確立されていないので、太田雄貴さんをはじめスポーツ業界で活躍するさまざまな方々から演出面などのアドバイスをもらってつくり込んでいこうとしています」 太田氏といえば、日本フェンシング初の五輪メダリストであり、2017年から4年間日本フェンシング協会の会長を務め、数々の改革を実行したことでも知られる。中でも全日本フェンシング選手権は、それまで300人ほどだった観客数を10倍以上に引き上げ、3万円という高額チケットも完売した。映像装置やLED照明による華々しい演出、人気ゲームアプリ『ドラゴンクエストウォーク』とのコラボ、フェンシングを普段見ない人にもその面白さや迫力が伝わりやすいよう剣先の動きをビジュアル化する装置を設置する(その後、東京五輪でも採用)など、エンターテインメントとしての価値を高めた結果だった。 船水も昨年の大会では、試合を行う1面だけをライトアップして非日常感を演出し、スポーツDJを導入して大会を盛り上げた。さらにはソフトテニス界初のVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)によるチャレンジ制度も新しい試みとして取り入れた。
ソフトテニス界になかった要素を、先陣を切って一つ一つつくり出す
船水が取り組んだのは、賞金大会の創設だけではない。 例えば、全国各地で子ども向けのソフトテニスのイベントを多数開催してきた。「これまでソフトテニスのイベントでレッスンしてお金を取ることって、ほとんどなかったんです。でも僕がプロとしてしっかり対価をいただくようにしてからは、その風潮が変わってきたように感じますね」。他にも、オンラインスクールや企業とのアライアンスも会社の事業の一つとして行っている。 大会の賞金、レッスンやイベントによる収入、企業からのスポンサー収入、これらは全て、プロとして食べていくために必要な要素だ。これまでのソフトテニス界に無かったこれらの要素を、船水はつくり上げようとしているのだ。 「今はまだそのモデルを見せている最中です。でも僕がやり始めたことで、追随してやってくれる人が出てきているので、そういう意味では良い影響を出せたのかなと、ソフトテニス界に貢献できたのかなと思います」