マイナー競技が苦境から脱却する方法とは? ソフトテニス王者・船水雄太、先陣を切って遂げる変革
ソフトテニス界で“初”の賞金大会を開催。変化の波を生み出す
プロ転向のタイミングとコロナ禍が重なったことは、普通ならば不運だといえるだろう。約2年間、国内外で多くの大会が中止となり、選手として活動する場は大幅に制限された。だが船水はこれを機に、ソフトテニス界の未来に向けて大きな一歩を踏み出すことができた。 その一つが、大会の創設だ。 2020年12月、男子ダブルスのトップ8組によるトーナメント戦「JAPAN GP 2020」を開催した。選手にとってはコロナ禍で失われた実践の場が、ファンにとっても選手たちの真剣なプレーを見る機会が与えられることになった。当日のライブ配信は実に10万人近い視聴数となり、ソフトテニスを愛する人たちにとって待ち望んだ一日となった。 だがそれだけでは、失われたものを取り戻しただけにすぎない。船水はさらに、ソフトテニス界が前進するきっかけをつくろうとした。それが“初の賞金大会“としての開催だ。 船水がプロ転向を志した理由の一つである「ソフトテニスを夢の描ける競技に」するためには、“選手の活動環境の向上”は大きな命題だといえるだろう。これまでソフトテニスの大会には賞金が無いことが当たり前だった。稼ぐことができなければ、競技を続けていくことは難しい。目指す子どもも増えない。ソフトテニスの普及・発展を考えれば、“稼げる競技”になることが必須だ。優勝賞金200万円はまだまだ心もとない金額かもしれない。だがソフトテニス界の常識を変える大きな一歩となった。 「当初はいろんな選手たちの声を形にしながら一回きりのつもりで開催したんですけど、その後、第2回、第3回と、しかもソフトテニス界で一番大きな賞金大会を開催する側に回ることになるというのは正直想像していませんでしたね」 2022年の第2回大会は予選を全国4ブロックで実施、年齢制限無しで子どもでも参加できるようにした。さらに翌年の第3回大会は女子ダブルスの大会で、女子初の賞金大会として開催。さらなる変化の波を広げていった。