トラブル多発の荒れた展開の中、ガブリエル・ボルトレトがF2初優勝。宮田莉朋は完走ならず|FIA F2シュピールベルグ フィーチャーレース
FIA F2の第7ラウンド、シュピールベルグ戦のフィーチャーレースが行なわれ、マクラーレン育成のガブリエル・ボルトレト(インヴィクタ)がシリーズ初優勝。宮田莉朋(ローディン)はリタイアに終わった。 【リザルト】FIA F2第7ラウンド:シュピールベルグ フィーチャーレース結果 タイヤ交換義務があり、40周で行なわれたフィーチャーレースは、スタート前から波乱含みの展開となった。各車がフォーメーションラップに向かおうとしたところ、ポールポジションのデニス・ハウガー(MPモータースポーツ)、10番グリッドのクシュ・マイニ(インヴィクタ)、14番グリッドのジャック・クロフォード(DAMS)の3台がエンジンストール。ピットレーンからのスタートを強いられた。 これで2番グリッドスタートのジョシュア・デュルクセン(AIXレーシング)が難なくホールショットを決めた。デュルクセンが逃げに出るかと思いきや、DRSの使用が解禁されるとガブリエル・ボルトレト(インヴィクタ)が急接近。4周目にはボルトレトがオーバーテイクを成功させて首位に躍り出ると、独走態勢に持ち込んでいった。 後方ではタイトル争いの主役であるポール・アロン(ハイテック)とアイザック・ハジャー(カンポス)が4番手を争って激しいバトルを繰り広げた。 上位勢はほとんどが柔らかいスーパーソフトタイヤを履いていたが、3番手のフランコ・コラピント(MPモータースポーツ)や6番手のオリバー・ベアマン(プレマ)らが、ソフトタイヤを履いてスタートしていた。 スーパーソフトタイヤのデグラデーション(性能劣化)は大きかったようで、すぐにソフトタイヤ勢の方がペースが良くなってしまう。6周目を終えた段階で、ホセ・マリア・マルティ(カンポス)が真っ先にピットインし、スーパーソフトタイヤからソフトタイヤへと履き替えた。デュルクセンも7周目を終えた段階でピットイン。その他のマシンも、続々とピットに向かった。 なお上位を争っていたアーロンは、ハジャーからの攻撃を封じる際、ブレーキング中に走行ラインを変えすぎたとして、5秒のタイム加算ペナルティを課された。 すると18周目に入ったメインストレートで、宮田が突如スローダウン。まだタイヤ交換義務を消化していない段階ではあったが5番手を走っていただけに、なんとも厳しい結果となった。その後宮田は、スピードを取り戻して走行を続けたが、ペースは上がらず、ずるずるとポジションを落としてしまった。 タイヤ交換を真っ先に終え、実質的な首位を走っていたマルティの後方には、ボルトレトが急接近。そして20周目にボルトレトはマルティを抜き、タイヤ交換を済ませたマシンの中で首位に立った。 その直後、ソフトタイヤでスタートし、2番手を走っていたベアマンが、マシントラブルでスローダウンしピットイン。レースを終えることになった。 ボルトレトに抜かれたマルティの後ろには、チームメイトのハジャーが接近。ハジャーは「ボルトレトを追いかけたいから、ポジションを譲ってくれ」と無線で懇願する。チームはハジャーを先行させるよう、マルティに指示を飛ばし、マルティはこれに応じた。 32周を走り切ったところで、先頭をひた走っていたコラピントがついにピットイン。ソフトタイヤからスーパーソフトタイヤへと履き替え、8番手でコースに復帰した。 スーパーソフトタイヤに履き替えたコラピントは猛烈なペースで飛ばし、デュルクセンやエンツォ・フィッティパルディ(VAR)、アーロンらを次々にオーバーテイク。レッドブル育成のカンポス勢ふたりの真後ろに迫った。コラピントはこのカンポスふたりを物ともせず、最終ラップで2番手に上がった。ただ、先頭のボルトレトは4秒先を行っていた。 結局ボルトレトがトップチェッカー。FIA F2での初優勝を遂げた。2位には異なる戦略で好勝負を見せたコラピントで、ファステストラップも記録した。 ハジャーが3位、マルティが4位。ただカンポスのチーム内には、遺恨が残るかもしれない。というのも、マルティはボルトレトを追いかけさせるためにハジャーにポジションを譲ったものの、追いかけ切れなかったためポジションを戻すよう要求していた。しかしハジャーはポジションを戻さずにフィニッシュラインを通過してしまったのだ。 ただマルティは、バーチャル・セーフティカー(VSC)が宣言されている際にタイヤ交換をした可能性があるとして、審議対象となっている。FIA F2ではVSC中にタイヤ交換義務を消化することができないとされており、この裁定次第ではマルティのポジションが大きく変わる可能性がある。 5番手でチェッカーを受けたのはアーロンだったが、アーロンは5秒のタイム加算ペナルティを受けていたため、最終結果ではフィッティパルディに抜かれて6位となった。 宮田はスローダウンの後も走行を続けたが、ピットに戻り一時リタイア表示となった。しかしその後走行を再開。結局6周遅れとなり、完走扱いにはならなかった。 ※追記: マルティのピットストップについてはレース後審議が行なわれたが、VSCが宣言された時点で第1セーフティカーラインに到達していなかったことが判明。これによりマルティは、タイヤ交換義務を消化していなかったと判断され、10秒のストップ&ゴーペナルティが科された。レースが終了しているため、30秒のタイム加算ペナルティに置き換えられた。 この結果マルティは15位に降格。フィッティパルティ以下、15番手でフィニッシュしていたファン・マヌエル・コレア(DAMS)までのポジションがひとつずつ繰り上がることになった。
田中 健一