【西武投手王国への道】シーズンを通じて安定した投球 今井達也が三振を量産できた理由「技術より、フィジカルや筋力が最初に来ないといけない」
【埼玉西武ライオンズ 投手王国への道】 パ・リーグを戦う西武の最大のストロングポイントである投手陣。近年、急速に力をつけてきたが、その裏には一体、何が隠されているのか。ライオンズ投手王国への道を追う――。 取材・文=中島大輔 写真=桜井ひとし 【選手データ】今井達也 プロフィール・通算成績・試合速報
大きな転機となった鴻江氏からの学び
164回1/3で180奪三振――。 「イニング以上の三振を取る」と毎試合目標に掲げる西武の今井達也は9月24日のオリックス戦(京セラドーム)まで今季24試合に先発し、自身初タイトルとなる最多奪三振をほぼ手中に収めている(今季の成績は9月27日時点、以下同)。 低迷するチームで9勝8敗と白星は思うように伸びていないが、防御率2.46はリーグ4位。シーズンを通じて安定した投球を続ける要因はどこにあるのだろうか。 「体のメカニズム的なところが大きいと思います。今年は暑さもあるので『練習を100%でやるときはやる。休むときは休む』というメリハリを効かせていかないと、常に行っている練習の質もいいものにはならないと思うので。1日の中でいかにいい過ごし方をするか。それは年間通してできていると思います」 8年前の2016年、作新学院高で夏の甲子園優勝投手になった今井はドラフト1位で西武に指名された。高卒2年目の途中から先発ローテーション入りするなど高いポテンシャルを見せたが、決して順調に伸びたわけではない。先輩の岸孝之(現楽天)やダルビッシュ有(パドレス)の投球フォームを参考にした一方、自身の投げ方を固められず、球速150キロ超の速球と鋭く曲がるスライダーを思うように操れずにいた。 大きな転機になったのは23年開幕前の自主トレで千賀滉大(メッツ)や菅野智之(巨人)も師事した鴻江寿治トレーナーから自分に合った身体の使い方を学んだことだ。若手のころは四球で崩れることもあったが、鴻江トレーナーに教わってから自身をうまくコントロールできるようになった。結果、プロ入り7年目で自身初の2ケタ勝利を達成した。 データ活用や投球メカニクスに詳しく、野球談義に熱心な今井はチームきっての理論派と周囲に認識されている。その意味で今季3勝目を飾った今年5月12日の楽天戦(ベルーナ)のあと、興味深い話をしていた。調子の良し悪しをどう考慮して試合に臨むのかと聞かれると、「結果の8~9割は運だと思う」と答えた。 「手からボールが離れたら、僕にはどうにもできません。ど真ん中に真っすぐを投げてホームランを打たれるときもあれば、打ち損じて内野ゴロやファウルになるときもある。それは相手があってのこと。でも、なるべく失点を防ぐためにどうするかがピッチャーとキャッチャーのやり取りとか、変化球の組み立てだと思う。もちろん最善を尽くしますけど、いい意味で相手もプロなので10回打席に立ったら2~3回はヒットを打つ。そこは仕方ないと割り切って投げるしかないと思います」 投球をバットに当てられれば、球が飛んだ場所次第で結果は変わる。つまり、結果は運に左右される。 対して、バットに当てさせなければ必ず抑えられる。今井は必然のアウトを求めて三振にこだわっているわけだ。