【西武投手王国への道】シーズンを通じて安定した投球 今井達也が三振を量産できた理由「技術より、フィジカルや筋力が最初に来ないといけない」
投球メカニクスで意識するのは「立ち方」
投手にできるのは質の高い球をいかに投げるか。今井はそのために大事なことを鴻江トレーナーに学び、考え方を整理できるようになった。 「技術より、フィジカルや筋力が最初に来ないといけない。そして自分はこういう体の構造だから、もっとこう動かさないといけないと考えていく。自分に合うものと合わないものの判断ができているので、練習している内容に自信と責任を持って取り組めています」 今井が誰より多い三振を奪えるのは各球種の質の高さに加え、特徴的な投球フォームがある。余計な力を極力入れず、スリークオーターより低いリリースポイントから発射するのだ。結果、周囲の投手とは異なる軌道で最速159キロの速球がうなりを上げるように飛んでいく。 「リリースがもともとそんなに高いピッチャーではないので、低めから吹き上がってくるボールは常にイメージしています。シュート回転するボールが悪いとは1回も思ったことがないですね。とにかく強いボール、誰が見ても速いと思う真っすぐを投げることが大事だと思います」 球界では「シュート回転=悪」のように語られてきたが、ラプソードやトラックマンなど弾道測定器の導入により、速球にシュート成分が含まれるのは普通だと知れ渡った。特に今井のように腕の位置が低い投げ方だと速球にシュート成分が多くなる。今井はそうした自身の特性を理解した上で、相手打者が打ちにくい球を求めている。さらに140キロ台のスライダーとチェンジアップ(高速シンカー)と逆方向に変化する球種も持つから相手打者は厄介だ。 以上の主要3球種を思うように操るため、投球メカニクスで最も意識するのは「立ち方」だと語る。 「投げる前に、しっかりマウンドに立つ。立った時点で7割くらい、どういうボールが行くのか決まっています。サードとファーストのラインで体の軸をつくるイメージです」 マウンドにしっかり立ち、体の軸をつくって自分の体をうまく使い、ホームベース方向に力を最大限に伝えていく。極限すれば、この作業が投球の質につながる。そのために土台になってくるのがフィジカルで、必要になるのが投球フォームの再現性だ。 こうした一連の動作の精度が昨季より高まり、今季のパフォーマンスに結びついていると今井は言う。 「結果が良かれ、悪かれ、自主トレから1年間せっかくやってきたことを続けるのが大事だと思います。そうじゃないといいものもできないし、技術はなかなか上がっていかないと去年感じました。去年は先発して5回持たないとか、完投目前で9回を投げ切れないこともあったけど、その要因を自分で把握できるようになったのが大きいと思います」 チームが低迷するなかでも自身の軸をブラさず、1年間やるべきことをやり切った。結果、チームで最も信頼される投手になると同時に、初タイトルとなる最多奪三振まで目前のところまでたどり着いた。
週刊ベースボール