世帯年収1,780万円で貯金は1億円、子のいない50代夫婦「完璧な老後計画」のはずが…気づいていなかった“落とし穴”【CFPが解説】
遺族の家計負担が増える可能性も
2.相続後の相続人の家計負担 今後、夫婦の主な資産となるのは、Aさんが購入する自宅と、Bさんが親から相続する築35年の木造アパート(1棟8室)の土地建物、それから貯蓄です。 貯蓄は1円単位まで遺産分割することができますが、自宅やアパートといった不動産は均等割することが難しく、また売却するにしても時間がかかります。 さらに、住宅を相続すると、その住宅が必要であろうとなかろうと、毎年固定資産税の納付が必要です。また、相続する遺産の課税価格の合計額から基礎控除額※を差し引いた、課税遺産総額に相続税が課税されます。 これらの出費は、のこされた相続人の家計の負担になりかねません。 ※ 基礎控除額は、(3,000万円+600万円×法定相続人の数)で算出できる。 同様なことは、Bさんが相続するアパートにもいえます。相続したあとに思わぬ改修費用が必要になったり、立地によっては入居者が減ることも考えられます。Bさんは時代に即した経営戦略を考えておかなければなりません。 この場合、Bさんが「相続時精算課税」を利用して、建物だけ※を親から生前贈与をしてもらい家賃収入を得たり、部屋のリフォームをしたり、建替えるというのも一案です。 ※ 土地は使用貸借して相続するまで無償で借りる。 ◆まとめ…A夫妻の「大きな決断」 ここまで筆者が話すとAさんは、「自分たちの老後までは考えていたつもりでしたが、介護や相続までは考えが足りていませんでした」と反省した様子です。 また、Aさんは続けて「身内で養子を探して託したほうがいいのかな。実は、私の兄の次男を養子に、という話が以前あったのですが、立ち消えになりまして……。もう1度話してみてもいいかもしれませんね」と言い、この日は帰られました。 後日改めてお話を伺うと、親族会議を開いた結果、兄の次男を養子に迎える準備を始めることになったようです。 子どものいない夫婦の場合、現役時代は潤沢に資産があっても、相続発生後に遺された配偶者や親族が思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。したがって、老後のことを考える際には、長い目でみて計画を立てることが重要です。 牧野 寿和 牧野FP事務所合同会社 代表社員
牧野 寿和
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