マレーシア政府、押収したLGBT腕時計の返還を命じられる 裁判所が違法と判断
マレーシアの裁判所は25日、同国政府に対し、スイスの大手時計メーカー「スウォッチ」から押収した虹色の腕時計172個を返還するよう命じた。 マレーシア政府は、この腕時計に「LGBT(性的少数者)の要素」が見られたことから押収したと説明していた。イスラム教徒が多数派のマレーシアでは同性愛は違法で、最高20年の禁錮刑に処される。 裁判所はこの日、押収の際に政府は令状を取っておらず、それらの製品の販売を禁じる法律も事後に成立したことから、押収は違法だと判断した。 サイフディン・ナスション・イスマイル内相は、政府の法務チームが「判決の根拠を検討」したうえで、上訴するか決めるとした。同時に、政府は「判決を尊重しなければならない。さもないと法廷侮辱とみなされる」と述べた。 当局は昨年5月、マレーシア各地のスウォッチの店舗を家宅捜索し、腕時計を押収した。それらの腕時計の販売禁止命令が出されたのは同8月だった。 そのため、腕時計が押収された時点ではスウォッチは犯罪を犯していなかったと、裁判所は判断した。 これにより、総額1万4000ドル(約215万円)相当の時計が返還される。ただし、販売禁止命令はそのままなので、売ることはできない。 スウォッチは昨年6月、押収に異議を唱え、法的措置をとった。自社製品について、「公序良俗の乱れや法律違反を引き起こすものではまったくない」と主張した。 マレーシアでは、同性愛は一般の法律でも宗教法でも違法とされている。 スウォッチは、性的少数者の誇りをたたえる虹色の「プライド」の旗を「すべてのジェンダーと人種を代弁する人類のシンボル」と説明していた。マレーシア政府は押収時、「LGBTQ」という頭文字が腕時計自体に見られると主張した。 スウォッチは、製品が押収されたことで企業の評判が落ち、ビジネスに悪影響が及んだと主張した。 マレーシア当局は、これらの腕時計が「一般市民に受け入れられていないLGBTQ+運動を促進や支持、正常なものとすることで、国家の利益を(中略)害する恐れがある」と主張した。 スウォッチ・グループはコメントの求めに応じなかった。 (英語記事 Malaysia government told to return seized LGBT watches)
(c) BBC News