今バズっている密着ドキュメンタリー『BackStory』の動画マーケティング戦略の最前線 サムネイルのキャッチコピーを「疑問形にしない」という結論! 今まさに行われている、西野亮廣の「仮説&検証」とは
サムネイルの最後に「?」はクセもの
さて。 現場は現場でそんな感じでしたが、僕ら(運営や動画編集チーム)は「このオーディションの様子をミュージカルに興味がない層にも届けて、最終的には劇場に足を運んでいただく」というミッションを抱えておりまして、この「記録用に撮った映像」に興味をもってもらう編集や仕掛けが求められます。 そんな中、スタッフさんから最初に上がってきた動画のサムネイルの文言が「出演権は誰の手に!?」だったんです。 たしかに、その通りなんですけども、この文言って何かを言っているようで実は何も言っていない気がして……というのも「オーディション」と謳っている時点で、視聴者さんの頭の中には「出演権は誰の手に?」という文言はあると思うんです。 つまり、枕を販売する時の宣伝文句に「寝るときに頭の下に敷くとイイ」と言っているようなもので、お客さんからすると「それは分かってます!」です。 次にスタッフさんから上がってきたのは「該当者なし?」だったんです。 たしかに動画の中では「該当者無し」という言葉を使っていて、その言葉を引っ張ってきて、サムネイルには最後に「?」を入れることで「どうなるの?」とお客さんの興味を惹き付けようとしたんだと思います。 ただ、この「?」がクセもので、僕らのこれまでの経験から、「該当者無し?」としてしまうと、「最終的には該当者が見つかったんだろうな」と邪推してしまう…というのがあって、実はあまりドキドキしない(「どうなるのー?」とはならない)。 東スポで「ネッシー発見?」と出ていたら、それは100%「ネッシー」じゃないじゃないですか? そんな感じです。
最新回は「地獄の確認」で観に来てもらった方がイイ
もちろん「?」を入れることで、「どうなるのー?」と思ってくれる純粋な人も半分ぐらいはいると思うのですが、「該当者無し?」と最後にクエスチョンマークを入れて「どうなるのー?」と動画を観てくれる人の数よりも、「該当者無し」と言いきってしまって、その地獄(確定の不幸)を確認しに来てくれる人の数の方が多いと思ったんです。 フジテレビの「ザ・ノンフィクション」やYouTubeの「街録ch」に発生している引力は「どうなるの?」ではなく、「地獄の確認」だと思っていて、今回の『BackStory』の最新回は「地獄の確認」で観に来てもらった方がイイような気がしてサムネイルに「該当者無し」という文言を入れ、タイトルに「全員不合格」と入れさせていただきました。 偉そうに語っておりますが、まだまだ仮説の領域を超えていなくて、これらの結果が出るのは、まだもう少し先だと思います。 そんなこんなで来夏めがけてファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の密着ドキュメンタリー『BackStory』をズイズイと進めていきたいと思います。 今週は、仕事の不手際からアシスタントプロデューサーがブチギレられる瞬間にスポットが当たっています。 個人的には、これまでで一番好きな回です。 お楽しみに。 密着ドキュメンタリー『BackStory』はメンバー登録していただけると、通常放送よりも1週間ぐらい早くご覧いただけます。 西野亮廣/Akihiro Nishino 1980年生まれ。芸人・絵本作家。モノクロのペン1本で描いた絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』。完全分業制によるオールカラーの絵本に『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』。小説に『グッド・コマーシャル』。ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』。
TEXT=西野亮廣