世界が驚いた日本の公立小学校、私たちは外国人から称賛される社会性をこうして身に着けてきた
■ 時間に正確で、団体行動ができて、礼儀正しい…日本人の特性を身に着けたのは小学校 【写真】何気ない光景だが、こういうものが日本人に刷り込まれている特質になる コロナ禍に巻き起こった9月入学論争。桜の咲く4月の入学式は日本の風物詩の一つだが、欧米では9月入学が主流。日本の教育はかなり独特のよう。世田谷区の小学生に密着したドキュメンタリー『小学校~それは小さな社会~』が海外の映画祭で注目を集めている。 手がけたのは英国人の父と日本人の母を持つ山崎エマ監督。大阪の公立小学校を卒業後、インターナショナル・スクールへ。規則だらけの日本社会に息苦しさを感じ、アメリカの大学へと進み、ニューヨークで暮らす。ところが、特別なことは何もしていないのに「よく働くね」「時間に遅れず責任感あるね」「チームへの貢献が素晴らしいね」と褒められ、「日本人だからでしょう」と思ったそう。 言われてみれば、私たちにも思い当たる節がたくさん、あるはず。先日、取材したフランスの俳優は「日本の皆さんは本当に礼儀正しい。フランス人ってやりたい放題。日本の方が見たら、驚かれるかも」と敬服していた。 確かにパリの空港では着いた途端、入国審査のために人々が押し合いへし合い。誰一人、列を作ろうとしない。日本ではまず見ない光景だ。サッカーのサポーターや大谷翔平選手がゴミを拾って、称賛されるのも日本人らしいエピソードと言えるだろう。
山崎監督は「多くの日本人に刷り込まれている特質を理解するヒントは小学校にある」とする。「小学校に入学する前の6歳児は、世界中の6歳児と同じような行動を取るでしょう。けれども、小学校を卒業した12歳児は、日本社会の基礎となる特質を体現するようになっています」。 ■ 6年間で驚くほど成長 身をもって知る監督は公立小学校を舞台に映画を撮ろうと、世田谷区の協力の下、1年間、150日、700時間、塚戸小学校でカメラを回した。 1年生はまず、挙手の仕方や廊下の歩き方、掃除や給食当番など、集団生活の一員としての規律と秩序について学ぶ。入学前から配膳や大きな声での返事を自宅で練習して備える子どもたち。用意された、小さな体には大きすぎるピカピカのランドセルもまた日本ならでは。時代を感じる変化は学校の先生が名前を呼ぶ際、男の子も「くん」ではなく、「さん」を付けていること。 1年生を手助けするのは6年生。彼らは下級生の模範になるのを誇りにしている。飽きてその場で横になったり、泣き出したり、子ども真っ盛りの1年生のケアをする。この1年生だって、やがてランドセルが小さくなっていくように6年生に育つのだ。本作では1年生と6年生に焦点を絞り、彼らの学校生活を追う。その差は歴然だ。