世界が驚いた日本の公立小学校、私たちは外国人から称賛される社会性をこうして身に着けてきた
胸が傷むのはコロナ禍の撮影であるため、みんながマスクしているだけでなく、どの生徒の机にも手製のアクリル板が貼られていること。6年生は器用にその間を行き来するが、1年生はいちいちぶつかって、仕切りがボロボロになっていく。給食も全員、前を向いて黙々と食べる。そして上級生は修学旅行など数々の行事、イベントをキャンセルさせられる。 ■ 先生も日々悩みながら奮闘 子どもたちの自主性と責任感をどう養うのか。6年生の先生は自分の体験から怠けようとする生徒に時に厳しく指導するものの、保護者から「優しく見守って」と要請されることもあり、悩ましい。 集団性の強さ、協調性の高さは他の国では見られない日本の特性。とはいえ、連帯責任を求めすぎると、いじめが生まれる要因になる可能性がある。 やることが多い上、未来を担う子どもたちを育てる重責がのしかかる教師という職業。時代に合わないのではないか、自分には向いていないのではないかと自問する先生。 それでも「殻を破れ」と先生は熱く叱咤激励する。その言葉に感銘したのか、自らの弱点に向き合い、自主練に励む6年生の男子児童がいる。久しぶりの運動会の種目に備え、黙々となわとびを練習する。本番をやり終えた後の彼のなんとも言えず、清々しい表情。
対照的に1年生はまだ幼く、意欲にもムラがある。来る新1年生のために音楽演奏をすることになったが、オーディションを経て、演者の座を掴んだものの、そこで一安心してしまう子も。できないのではなく、練習しない子を先生は見逃さない。泣き出しても容赦しない。泣いても解決しないと、とことん教え込む。なぜ叱られているのか。小さくても子どもはちゃんと理解する。非を認めた女児は涙を拭き、自ら練習を始めた。 春が来て、新しい1年生がやってくる。旧1年生の顔つきは1年でびっくりするほど、変わっていた。卒業する頃にはどれほど、成長しているのだろう。 ■ 日本の小学校の「当り前」が海外から見れば「すごいこと」 「日本の子供たちの責任感がすごい。ギリシャでは小さな子供は信頼できないものという認識」 「アメリカでは子供たちに掃除をさせると『なんで自分の子がそんなことを』という話になる」 日本式教育である「TOKKATSU(特活)」(学級会や日直など、教科外の活動、特別活動)。日本人である私たちが当たり前にやっていることは海外から見ると驚きだらけらしい。 本作はヨーロッパ最大の日本映画祭「ニッポン・コネクション」(ドイツ)で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞、教育大国フィンランドでは4カ月のロングランヒットを記録。アメリカ人の夫を持つ監督は現在、自分の子どもを日本の公立の小学校に入れたいと考えているそうである。 『⼩学校~それは⼩さな社会~』 12⽉13⽇(⾦)シネスイッチ銀座ほか全国順次公開 © Cineric Creative / NHK / Pystymetsä / Point du Jour 配給:ハピネットファントム・スタジオ 監督・編集:⼭崎エマ
髙山 亜紀