日銀「ゼロ金利解除」でマンション価格が“暴落”? プロが明かす「価値が落ちやすい物件」と「落ちにくい物件」
早ければ今夏にも日銀が政策金利の利上げを行うのではないか、という見方が広がっている。今や住宅購入者の7割が変動金利でローンを組む時代。金利上昇による負担増も心配だが、同じぐらい気がかりなのは「金利上昇」と「住宅価格」との関係だ。 【図を見る】毎月返済額が15万円の場合、金利が1%アップすると借入可能な額はこんなに変わる (前後編の前編/後編に続く) ***
住宅市場の高騰は“超低金利”の影響が大きい
このところの住宅市場の高騰は、これまで政府と日銀が進めてきた金融政策と無縁でない。黒田東彦・元日銀総裁の時代に始まった「マイナス金利」や、政府の「住宅ローン減税」政策など、購入者が“買いやすい”状態が続いてきた背景が大きく関係している。 「住宅ローンの金利が低ければ低いほど、同じ年収でも手を出せる住宅の条件が広がります。買える人がいるから住宅価格も上がってきた側面もありますので、“超低金利時代”が続いたことと、住宅市場の高騰は密接に関係していると言えます」 そう解説するのは、住宅ローンアナリストの塩澤崇氏。住宅ローン比較診断サービスの「モゲチェック」を運営する傍ら、YouTubeやXなどでも変動金利の最新情報を発信する住宅ローンの専門家だ。 それでは、気になる「金利上昇後」の住宅価格の行方は――?
理論上、金利が1%上昇すると住宅価格は20%の下落リスクが
超低金利が住宅価格を押し上げたということは、金利上昇は逆に住宅価格を押し下げることになる。そこまでは分かるのだが、知りたいのは具体的な“下がり幅”だ。 「例えば、毎月の支払額を15万円と設定して住宅ローンを組んだケースで考えてみましょう。変動金利が0.5%の場合では約5800万円の借入が可能ですが、仮に1%上がって1.5%となった場合では、借入可能額は約4900万円と、20%ダウンすることになります」(塩澤氏) 逆説的だが、住宅ローンを借りられる額が20%減少すると、理屈では住宅市場もそれと同程度の下落リスクがあるというわけだ。 変動金利は基本的に政策金利に連動して動くため、言い換えるならば、政策金利が上がる度に変動金利で購入できる住宅の条件が狭まっていく、ということになる。 「政策金利の着地点を見定めるのはかなり難しいのですが、私は年内に0.25%程度の利上げが実施され、その後に利上げが続いたとしても、最終的には1%前後におさまるだろうと予想しています」(塩澤氏) とは言え、金利上昇が既定路線なのであれば、近い将来の住宅市場の下落もまた、定められた運命ということなのだろうか。 「影響がないとは言えないでしょう。ただ、足元の建材費や人件費の高騰など、インフレの影響もありますし、賃上げの流れが広がればローンの与信も増えることになります。こうした動きは住宅価格の押し上げ要因になりますので、一部で持ち上がっている“暴落論”には懐疑的です。一方、これまで以上にエリアや物件ごとに“値崩れ”のしやすさ/しにくさが顕著になることは予想されます」(塩澤氏)