夏の甲子園、早稲田実業は「斎藤佑樹」以来のフィーバーを起こせるか? OBは「今年は慶応でなく、早稲田の番だ」と意気込む
8月7日に開幕した夏の甲子園。今大会で高い注目を集めそうなチームは、49代表校で最多30回目の出場となる早稲田実(西東京)である。昨年の決勝戦は、107年ぶりに優勝した慶応(神奈川)の大応援団が甲子園に詰めかけて大きな話題になったが、ライバルの盛り上がりを見て、「今年は慶応ではなく、早稲田の番だ」と意気込むOBや学校関係者も多いという。【西尾典文/野球ライター】 【写真】「小芝風花」16歳当時の笑顔が初々しすぎる 歴代「センバツ応援イメージキャラクター」の爽やかな笑顔 ***
キャプテンの高校通算64本の本塁打を放つ強打者
では、今年の早稲田実は、昨年の慶応に続くフィーバーを巻き起こす可能性は、どの程度あるのだろうか。結論から先に言うと、優勝とまではいかなくても、上位進出を十分に狙えるチーム力を備えている。 最大の強みは、高い得点力だ。西東京大会では、6試合で58得点をたたき出し、準々決勝以降の3試合は、14点、14点、10点と全て二桁得点で相手に打ち勝っている。 打線の中心は、キャプテンを務める宇野真仁朗(3年)。小学校時代はU12侍ジャパン、中学時代には、リトルシニアの日本代表に選ばれており、早稲田実でも、入学直後からレギュラーを獲得した“逸材”だ。 高校通算本塁打は64本を数え、そのうち16本は、この春以降に木製バットを使用して放ったものだ。宇野本人は、高校からのプロ入りを検討していると言われており、スカウト陣からの評価も高い。パ・リーグ球団スカウトは、宇野について以下のように語る。 「もちろん、スイングスピードは速いのですが、ボールを遠くに飛ばす“コツ”を掴んでいます。これが強みだと思います。打球に角度をつけるのが上手い。最近流行りの言葉で言えば、『バレルゾーン』(長打が出やすいと言われる打球角度と打球速度の範囲)に入る打球が多いです。高校生が大学やプロに行くと、木製バットへの対応に苦しみますが、既に十分対応ができています。打撃に関しては、今年の高校生で上位クラスでしょう」
投手力と守備が不安材料
西東京大会の宇野は、初戦の明大八王子戦、続く上水戦でノーヒットに終わったが、5回戦の日本学園戦、準々決勝の国学院久我山戦ではホームランを放ち、見事に復調。決勝の日大三戦では、先制のタイムリーツーベースでチームに勢いをつけて、優勝に大きな役割を果たした。 打撃力に秀でている選手は、宇野だけはない。3番に入る高崎亘弘(3年)は西東京大会で打率5割を記録したほか、4番の石原優成(3年)も、宇野と並ぶチームトップタイの8打点をたたき出した。 機動力も光る。宇野が4盗塁、高崎が7盗塁。相手チームを脚で攪乱した。早稲田実の得点力は、全出場校の中で上位クラスにあることは疑いようがない。 その一方、投手力と守備には“不安材料”が残る。西東京大会の失点は、6試合で実に31。準々決勝の国学院久我山戦は14対13、決勝の日大三戦では10対9と何とか競り勝ったものの、いずれも大量失点を喫している。 とはいっても、個々の投手に実力がないわけではない。背番号1を背負う左腕の中村心太(2年)は、コンスタントに140キロ台のスピードをマークし、リズムに乗ると、簡単に相手打線を抑え込むボールを持っている。また、同じ2年生の浅木遥斗(2年)は、身長196cmを誇る“超大型右腕”。素材の良さは十分だ。