スカイマークにLCC、日本の航空業界の現状を俯瞰する
大手よりも安い値段でサービスを提供し、「空の革命児」と呼ばれたスカイマークが1月28日、東京地裁に民事再生法の適用を申請して経営破綻しました。スカイマークは運航を継続しつつ、支援を申し出た投資ファンドの協力を得て経営再建を図ることになりました。日本航空、全日本空輸の大手2社に対抗する「第3極」といわれたスカイマークでしたが、体力に見合わない大型機の無理な導入計画などが経営悪化の原因になりました。加えて、最近の日本の航空ビジネスの環境変化も少なからず影響しています。
近年の国内の航空輸送旅客の動向は、原油価格の高騰、2008年のリーマン・ショックによる景気後退、東日本大震災などの影響で減少傾向でしたが、格安航空会社(LCC =ロー・コスト・キャリア)の参入による需要の増加により、2012年度からは増加に転じています。また、国内全体の利用者の約6割が羽田空港を利用しています。 こうした中でこれまで日本の航空ビジネスは大手2社が主導してしのぎをけずってきた構図でした。国際線を含めた2013年の売り上げは、ANAホールディングスが約1・6兆円、日本航空が1・3兆円という水準です。中国や韓国などアジア地域では売り上げ規模1兆円レベルの航空会社が乱立しているのに対し、アメリカや欧州では2兆円から4兆円の規模の3つほどの大きなグループに集約されている点に違いがあります。 最近の日本の航空業界の特徴はLCCが参入してきたことです。2012年にはピーチアビエーション、ジェットスター・ジャパン、エアアジア・ジャパン(現・バニラエア)の3社が誕生。2014年には中国系の春秋航空日本も参入し、新たな市場を開拓しています。
LCCは空港での滞在時間の短縮や、小型の同一機材を使うことによる整備コストの削減、機内サービスの簡素化などでコスト安を実現。こうした方法で利用者に低運賃によるサービスを提供し、大手2社と比べて輸送人キロ(1人の旅客を1キロ輸送した輸送量)当たりの旅客収入は50%と低く抑えられています。LCCはこれまで航空機を利用する機会のなかった旅客層や価格に敏感な消費者層に訴えることで、新たな航空需要の取り込みを行っており、これまでのところ国内線におけるシェアは8%程度まで成長してきています。ただパイロット不足の解消など、今後の事業の拡大にあたっては克服すべき課題もあります。 日本の航空業界に追い風となっているのは近年の訪日外国人数の増加です。2013年に1000万人を突破し、2014年は1340万人にまで増加しており、日本政府は2020年度までに2000万人の達成を目指しています。こうした動きは国際線に加えて国内線の需要の押し上げにも貢献するとみられています。 (3Nアソシエイツ)