【箱根駅伝】鬼門を克服、3冠の重圧…早稲田と国学院「4位の大健闘と3位の悔しさ」明暗別れた背景
「それほど下馬評の高くなかった早稲田大の4位は大健闘でしょう。一つ上の3位とはいえ、国学院大は大学駅伝の3冠(出雲、全日本、箱根)を狙っていたので悔しさの残る結果です」 【感動再び!】箱根駅伝2025の大展望!「シン山の神」ら注目選手「意外な素顔」写真 こう話すのは早大時代に4年連続で箱根駅伝に出場した、マラソン解説者の金哲彦氏だ。 1月2・3日に行われた第101回の箱根駅伝。青山学院大が昨年自らマークした大会新記録(10時間41分25秒)を更新する10時間41分19秒の好タイムで2年連続8度目の総合優勝を飾る一方、明暗の分かれた2校がある。冒頭で金氏が紹介した早大と国学院大だ。 ’11年以来、箱根の栄冠から遠ざかっている早大が、優勝候補の「3強」(青学大、駒沢大、国学院大)の牙城を崩すまであと一歩に迫る4位に入った背景にはどんな事情があったのだろう。 スポーツ紙各紙は、「山登り」の5区で早大を6位から3位に引き上げた工藤慎作(2年、八千代松陰高)の走りをクローズアップする。メガネをかけた知的な風貌から、人気マンガになぞらえ「山の名探偵」と呼ばれる選手だ。 ◆「苦手とする6区で素晴らしい走り」 しかし金氏は別の見方をする(以下、コメントは金氏)。 「もちろん、工藤君のがんばりが大きかったのは間違いありません。しかし、早大躍進の原動力となったのは復路最初の6区・山崎一吹君(2年、学法石川高)の健闘です。早大はこれまで『山登り』で踏ん張っても『山下り』が鬼門でした。6区で大きく順位を落としていたんです。 早大が苦手とする6区で、山崎君は区間5位の素晴らしい走りをみせてくれました。山崎君の滑らかなピッチ走法は『山下り』向きです。今季の早大には『山下り』候補の選手が3人ほどいたとか。鬼門を克服できたのが躍進の最大の要因でしょう」 背景には、箱根駅伝が目的ではなく前を見据えた早大の姿勢があるという。 「他の大学もそうですが、特に早大は『早稲田から世界へ』という目標をかかげ将来のオリンピック出場なども見据えているんです。8区の伊福陽太君(4年、洛南高)などは、学生時代からフルマラソン大会に出場しています。箱根駅伝がゴールでなく、未来に目を向けたチームの方針が『山下り』を克服した選手層の厚さを生んでいるのでしょう」 ◆「経験したことのないプレッシャー」 一方の国学院大ーー。 早大の一つ上の3位となったものの、「3強」の一角は最後まで優勝にからめず満足のいく結果とはいえなかった。 「優勝を逃した原因は、一言でいえば経験したことのないプレッシャーです。国学院大は箱根で優勝したことがないにもかかわらず、出雲と全日本で2連覇したため3冠への期待がとても大きかった。普段あまり姿を出さないメディアが大勢トレーニング場へ現れ、選手たちは重圧を感じたのでしょう。 2区・平林清澄君(4年、美方高)や9区・上原琉翔君(3年、北山高)などは、青学大や駒沢大を逆転できる実力があったにもかかわらず明らかに本来の走りでありませんでした。焦る気持ちに身体がついていっていない印象です。初めて体験する大きな緊張感と注目の大舞台で、持っている力の7割ほどしか出せなかったのではないでしょうか」 だが、この経験は来年以降の大きな糧になると金氏は語る。 「特に1、2年の下級生は、今回のようなプレッシャーを体験したことで来年からはどんな状況でも堂々と走れるようになるでしょう。重圧に負けない精神力を鍛えるキッカケになったはずですから。次回こそ悲願の3冠を達成し、真の大学王者になってもらいたいです」 今回は明暗分かれた早大と国学院大だが、1年後の結果は誰も予測できない。若者たちは予想を遥かに超える成長をみせてくれるのだから。
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