シビック・タイプR CNF-R、2戦連続でアップデート。S耐第5戦鈴鹿ではサスペンションを強化
9月28日、三重県の鈴鹿サーキットで開催されるENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE第5戦『SUZUKA S耐』は11時45分に決勝レースの幕が開けた。開発を目的とするST-Qクラスに参戦しているTeam HRCは、前戦のもてぎに続き271号車シビック・タイプR CNF-Rに、アップデートを施して臨んだ。 【写真】2024スーパー耐久第5戦鈴鹿 桂伸一、荒尾創大、大津弘樹(Team HRC) 今回のスーパー耐久第5戦鈴鹿で計7台がエントリーしているST-Qクラスは、STMO公認の開発車両を走らせることができるクラスだ。国内の自動車メーカーが、レースに参戦しながらカーボンニュートラルに向けた取り組みなどさまざまな活動を行っている。 そんなST-Qクラスを活用すべく、2023年のスーパー耐久第2戦富士SUPER TEC 24時間レースから参戦を開始したTeam HRCは、シビック・タイプR CNF-Rを走らせてざまざま取り組みを実施。主にカーボンニュートラル燃料に適合したレース用エンジンの開発、参加型モータースポーツ向けのベース車両製作やパーツの研究開発を目的としている。 2024年も参戦と開発を継続させているが、第1戦SUGOと第2戦富士ではパワステ等のトラブルに見舞われる場面も。序盤2戦の結果も踏まえ、第3戦オートポリスはスキップしたものの、2戦ぶりの登場となった第4戦もてぎでは、271号車シビック・タイプR CNF-Rに車両のアップデートが施された。 そのアップデートの内容は、猛暑下でのレースに対応するため熱対策を徹底するため、アンダーボディのエアインテーク/アウトレットを最適化し、各冷却装置やエンジンルーム内への冷却空気導入と排熱の効率化を図るというもの。加えて、レーシングカーとして使用しないパーツなどを外すことで、約10kgの軽量化にも成功しており、外観からもフロントグリルやボンネット上の開口部など外観からも違いが見てとれた。 これらのアップデートは、問題としていたパワステの水温上昇にもうまく機能していたようで、さらにST-2クラスで95号車 SPOON リジカラ CIVICをドライブする三井優介の新鮮な意見も良い刺激に。予選では想定以上のタイムを記録していただけに決勝での成果にも期待されたが、なんとスタート直前に車載バッテリーのトラブルが発生。早々から4周遅れの状態で開始することになり、完走したもののいまだに課題と悔しさが残る結果となった。 そんな第4戦もてぎでの悔しさも胸に臨んでいる第5戦鈴鹿では、さらなるアップデートを追加し、コーナリングでの回頭性と安定性を向上するサスペンションを強化した。HRCによると、前戦までの走行を踏まえた各部の点検と調整を行うとともに、コーナリングでの回頭性と安定性の向上のためスタビライザー強化などサスペンションの最適化を図っているという。 加えて、前戦もてぎでの課題となっていたドライバーの熱対策もエアダクトやエンジンルーム内のインシュレーターを見直すことで、さらに改良が加えられている。また、今回はマシンのみならず、新しいドライバーも加わり、ホンダ育成若手ドライバーの荒尾創大がCドライバーに登録された。 荒尾は2022~23年にフランスF4およびイギリスGB3で活躍し、今季はスーパーフォーミュラ・ライツ(SFL)に参戦している若手ドライバーだ。本来は、第4戦もてぎでドライブする予定だったが、都合により今回の鈴鹿がハコ車でのレースデビューとなる。そんな荒尾は「楽しいですね。今まではフォーミュラしか乗っていなかったので、こういうクルマをドライブする経験ができるのは新鮮です」と楽しみな様子も伺えた。 そんな荒尾とともに戦うのは、継続参戦となるTeam HRCレギュラードライバーの大津弘樹、今シーズンのS耐富士24時間レースで完走に貢献したモータージャーナリスト桂伸一。経験豊富なふたりのドライバーと新たな若手ドライバーの荒尾を率いた3名体制で今回の第5戦鈴鹿に臨んでおり、今大会こそはノートラブルで走り切りたいところだ。 ■新型シビックRSは「ドライバーの要求に素直に答えてくれる車」と佐藤蓮も大絶賛 S耐およびスーパーGTで活躍中のシビック・タイプRのDNAを引き継いだ市販車向けの新型シビックが、いよいよ9月13日に発売された。RSモデルが登場して50周年の節目に発売されたシビックにも新設定された今回のモデルは、親しみやすさと特別な存在感をあわせ持っている。 シビックのRSモデルは、すでに各地でもお披露目されているが、今回S耐の舞台となる鈴鹿サーキットでも展示されている。賑わいを見せるS耐横丁のイベントステージでは、開発責任の明本禧洙氏と、スーパーGTで活躍中の佐藤蓮によるトークショーが9月29日の決勝日に行われた。 レースだけでなく普段からシビック・タイプRに乗り、事前にシビックRSも試乗した佐藤は「すごく上質なしっとりとした乗り心地です。若い世代にもマニュアルの楽しさを知ってほしいです」と印象を語り、スタビリティの高さに驚きを見せていた。 レース車両のDNAも引き継いだシビックRSのように、S耐で活躍する271号車シビック・タイプR CNF-Rの開発はレースだけでなく市販車にもその成果が反映されている。市販車シビックおよび、進化し続ける271号車シビック・タイプR CNF-RとTeam HRCの活躍に期待したいところだ。 [オートスポーツweb 2024年09月29日]