「飯を喰らひて華と告ぐ」新たな当たり役を得た仲村トオルが味のある大暴走!
「メディア化は夢見ていたものの、僕は基本的に重苦しい作品を描くタイプなので、なかなかかなわないだろうな…と思っていました」と語っていた、マンガ家の足立和平氏。その彼が描く「飯を喰らひて華と告ぐ」(白泉社刊)が仲村トオルの主演でドラマ化された。1話12分のコンパクトな構成ながら、中身の濃い仕上がりのドラマは一気見してしまう中毒性がある。撮影現場を訪れた足立氏は「主演の仲村トオルさんの立ち居振る舞いが完全に主人公の店主(オヤジ)で笑ってしまいました」とうれしくなったと話す。 料理の腕は超一級だけれど、ちょっぴり(いや、かなり)感性がズレているオヤジを中心に回る物語は「クセになる」と好評だ。そんな、一風変わったグルメドラマの味わい方を探ってみる。
勘違い暴走系店主が織り成すドラマは絶妙な尺の12分構成
TOKYO MXで放送中のドラマ「飯を喰らひて華と告ぐ」は、東京都内のとある路地裏にたたずむ中華料理店「一番軒」が舞台だ。昭和で時が止まったような雰囲気の店を切り盛りする店主・オヤジ(仲村)は、なぜわざわざ中華料理店の看板を出している? とツッコみたくなるぐらい、どんな料理でも作る。訪れた客に「望むものは何でも出す」と言い、ラーメンや長崎ちゃんぽんといった定番中華から、ハンバーグ、アジの姿造りやサムゲタンと国籍を問わないさまざまな料理を出す。 出された料理を食べて、客はそのおいしさに感動するが、その感動もつかの間、オヤジの暴走に客たちはあ然。そう、このオヤジには、自己満足の格言を交えた励ましを語り出すクセがあるのだ。「俺には分かるよ」と、客のバックグラウンドを勝手に推測し、「違うんだけど…」と戸惑う彼らを尻目にどんどん話を進めていく。そんなやりとりは、実際に自分の身に降りかかったら腹立たしさすら覚えるかもしれないが、仲村のど真面目かつ熱い演技を目の当たりにするとおかしさとほっこりした気持ちになってしまうから不思議。 そんな、どこまでもかみ合わないオヤジと客のやりとりは、12分という尺がぴったりだ。畳み掛けるように物語を回し、ツッコミを入れる間を持たせない。そんな絶妙な尺だからこそ、中毒性のある作品として話題を呼んでいるのかもしれない。