「飯を喰らひて華と告ぐ」新たな当たり役を得た仲村トオルが味のある大暴走!
“勘違い系”料理人役の仲村が見せる新境地を拓く見事な怪演
仲村扮(ふん)するオヤジは、昭和の名だたる俳優たちなら面白おかしく演じるだろうと感じさせる役だ。なぜなら、おしゃべり好きで人との関わり合いが好きそうなくせに、人の話を聞かずに暴走し、最後の最後では自己満足の自己完結で終わる人物だから。昭和にはこんなおっさんが多く生息していて、愛されキャラとして慕われていたものだ。しかし、今は人とのつながりが薄くなりがちな令和。そんなおせっかいなキャラクターを、憎めない愛すべき人物として演じている仲村は、唯一無二の存在感をこの作品で放っている。ややもすると嫌われキャラになってしまうオヤジを見ていて「この人に会いに『一番軒』に行きたいなぁ」と思わせてしまうのは、仲村の振り切った芝居と誠実さがあるからだ。そこには揺るぎない風格さえあるような…。彼は令和の今、人々が忘れかけている人情やおせっかいを思い起こさせる貴重な俳優の一人と言っても過言ではないはずだ。
豪華なゲストと仲村の永遠にかみ合わないやりとりこそ、このドラマのツボ
本作は、1話完結で全12話。「一番軒」を訪れ、オヤジの壮大な勘違いに困惑する客を演じるのは、個性豊かな豪華ゲストたちだ。第1話のゲスト・田村健太郎は、経理マンなのに営業マンと勘違いされるサラリーマンを熱演。また、第2話には猫背椿が登場し、夫婦旅行が中止になり、意気消沈しながら店を訪れる主婦をリアルに演じた。 田村、猫背のほか、吉村界人、きたろう、高橋ひとみ、三河悠冴、華村あすか、福井俊太郎(GAG)、山崎紘菜、山城琉飛、円井わん、柄本時生といったゲストが毎回登場するが、中でも目を引くゲストは、第4話で妻に先立たれ元気をなくした元気のない老人を好演した、きたろう。
彼は、気の抜けた様子で一番軒の前にいたところ、その様子を心配したオヤジに担ぎ込まれて店に入る。オヤジは老人が余命いくばくもないと思い込んて励ますが、それは大きな勘違い。老人は「俺はまだ死なない!」と激怒するが、オヤジが作った里芋とイカの煮物の味に亡き妻を思い出し…。まだまだ死んでたまるか! と奮起した様子を演技巧者のきたろうが見事に体現。しゃきっとよみがえった彼の姿に元気をもらった。