「飯を喰らひて華と告ぐ」新たな当たり役を得た仲村トオルが味のある大暴走!
オヤジの過去を描く番外編的なストーリーの第9話には、20年前の同棲相手役として山崎が出演。彼女は30歳を前に結婚を焦っていた。結婚情報誌を目につく場所に置いてみたりと、涙ぐましいアピールを重ねる。が、その性質は昔からまったく変わらない若かりしオヤジに彼女の思いが届くはずもなく…。救いようのない勘違いをして、的外れな反応をする彼に諦めたような表情を見せる彼女がなんとも切ない。そして、時は現在、辛いものが好きな彼女に作ってあげた豚キムチを1人で頬張るオヤジは何を思うのか。…きっと彼女の真意とは違う思いを抱えているに違いない。それもまた切ない。
9月24日に放送される最終回には、日々に追い詰められた役者志望の青年役として柄本が登場し、物語に華を添える。 どのキャラクターも、オヤジのとんでもない推測に最初は戸惑うものの、抵抗するのを諦めて岐路につき、翌日からなんとなくすっきりした様子を見せるのがとても印象的で、彼らの未来に幸あれと応援したくなってしまう。そんな、魅力的でいとおしさを感じる人物を演じているゲストと仲村の暴走のかみ合わなさこそ、このドラマの醍醐味(だいごみ)なのだ。
深夜に見るには破壊力が過ぎる絶品料理が物語を彩る
オヤジが客の様子に合わせて真心を込めて作る料理は、どれも、見ているだけでよだれものの品々ばかり。本放送は午後11:45からということで、夕飯を済ませている人にとっては小腹の減る時間。仕事終わりで空腹のまま帰宅したばかりのタイミングで見る人にとっては刺激の強すぎる“飯テロ”にほかならない。テレビの前で見ている視聴者は実際にその味を確かめることはできないものの、完成して客の前に出された料理がアップで映し出される瞬間やたまらないといった顔で頬張る客の表情などなど、どの料理も間違いなく絶品であることは容易に想像できる。「明日、これ食べよう!」と心に誓いながら眠りにつく視聴者は少なくないはず。
ついに、オヤジのもとに弟子希望者が現れる!?
数々の勘違い(本人はそう思ってはいないが…)をしながらも、客を幸せにする料理を提供し続けるオヤジ。ついに迎える最終回では、包丁を片手に思いつめた様子の青年(柄本)が一番軒に押し入って来る。彼は、俳優を夢見て上京してきたものの、生活に困窮していた。何日もまともに食事をしておらず、腹をすかして入った店が一番軒だったのが運の尽き…!? オヤジの勘違いワールドに巻き込まれてしまう。極限状態でうつろになっている柄本の芝居はリアリティー満載。そして、目に狂気が宿る彼を相手に、包丁を持っている=料理人志望と的外れな推測をするオヤジこと、仲村の鈍感力爆発の演技もすごい。今、さまざまな悩みや葛藤を抱えている人にぜひ見てほしいエピソードだ。
文/高橋 真希子