「F-35戦闘機なんか要らない!」イーロン・マスクが主張する真意
ドローンの効率性
第二に、ドローンの方がはるかに安価で効率的ではないかという議論がある。それを教えているのがウクライナ戦争だ。 2023年8月に公表された「ウクライナでは、数百万ドル相当の最高級戦車や高価な重装甲車が、わずか数百ドルの安価な爆発ドローンに狙われている」という記事によれば、ウクライナ戦争では、機体にカメラと映像伝送装置を取り付け、操縦者側の受信機で映像をゴーグルやモニターに投影することで、その映像を見ながらドローンを操縦する、ファースト・パーソン・ビュー(First Person View, FPV)ドローン(無人機)が大活躍している。 その結果として、ウォロディミール・ゼレンスキー大統領は2023年12月、ウクライナは2024年中に100万機のFPVドローンを軍に提供するとのべた。 同年8月に公開された動画では、FPVドローンがロシア製戦車T-90Mと思われるものに激突した。 先の記事は、「T-90Mは、推定価格が450万ドルと、1機数百ドルのドローンよりもはるかに高価な最新型ロシア戦車である」と説明している。こうした攻撃に使用される「FPVドローンの価格は、1台あたり400ドルから500ドル程度」という。つまり、「費用対効果」でいうと、たしかにドローンは圧倒的に安価で有効であるようにみえる。 具体的には、2022年にウクライナで組織された非営利団体Escadroneが製造するFPVペガサス攻撃ドローンの価格は、「341ドルから462ドル」と記されている。 なお、米国が提供した自爆突入型ドローン(徘徊型兵器)は「6万ドルから8万ドル」という。もっとも高価な軍事用ドローンの一つが「MQ-9 リーパー」だが、その価格は「F-35戦闘機の約4分の1の価格」という情報がある。 もちろん、有人戦闘機の重要性を唱える意見も根強い。有人でなければ、人間にかかる重力を考慮せずに超音速兵器を開発できるが、いまのところ、ドローンの性能は有人戦闘機と比べて必ずしも高くない。しかも、航続距離や積載量などでもドローンは見劣りする。 このため、現状では、「米軍が優先するインド太平洋地域での戦争のように、広大な地域での航空戦や、海戦がより多く発生する状況では、これらの無人機は速度が遅く、搭載量や航続距離も不十分」と考えられている(「ビジネス・インサイダー」を参照)。