《ブラジル》JICA協力隊員リレーエッセイ=ブラジル各地から日系社会を伝える(16) 日本の幼稚園と動画交流で広がる共感 サンパウロ市 川村知里(ちさと)
2023年8月から聖市にあるサウージ学園で活動している川村知里です。当学園は、1993年夏に日系二世の学園長が、同じ教会に通う日系人の子ども達を自宅で預かったことをきっかけに創設された私立学校です。今では、0歳から10歳まで日系・非日系合わせて100人もの生徒が通うほどの学園になりましたが、開園当時の家庭的な雰囲気が今でも残っています。 当学園は、生活の中で日本語や日本文化に触れることが少なくなってきた日系の子ども達に、日本の文化に触れる機会を与え人格形成の大切な機会としてもらうため、日本語の授業や季節に合わせた童謡紹介、ご飯の前のお祈り時には「いただきます」の挨拶を取り入れています。 上記の取組み対し、私は8年間の日本での幼稚園教諭経験を活かし、日本の幼稚園では一般的な「折り紙」や「音楽遊び」を子ども達と一緒に行っています。活動を始めてから約9カ月が経ちますが、日本により興味をもってくれたり、日本語を覚えて自慢げに話したりする子どもが増えてきたと実感しています。
更に日本を身近に感じてもらうために、日本の幼稚園と動画による交流を開始しました。日本の卒園式の時期には、サウージ学園の子ども達より、ポルトガル語と日本語によるお祝いメッセージを送りました。動画を見た日本の子ども達は、それまで実際にポルトガル語を聴いたことがなかったので、「初めてポルトガル語が聞けて嬉しかった」など、とても喜んでくれたそうです。 その後は、お祝い動画のお返しとして、日本の幼稚園の様子を、動画で紹介してもらいました。日本の幼稚園では、外で履いていた靴を玄関で履き替えたり、制服から活動着に着替えたりするため、その様子を見たブラジルの子ども達は驚き、興味を示してくれました。 その後も動画による交流は続き、日本の卒園式の様子が送られてきた際には、卒園式で泣いている日本の子ども達の姿を見たブラジル人の子ども達から、「どうして泣いているの」と質問を受けました。「卒園すると学校に行かなくなったり、友達とも会えなくなるから寂しくて泣いている」と伝えると、子ども達は共感してくれたようでした。 今後もこの交流を継続し、「日本を知りたい、ブラジルのことも知ってもらいたい」と想う子供達が増えるように、活動していきたいと思います。
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