〈個人事業主・フリーランス〉さらなる事業展開を狙いたい…「法人化のベストタイミング」はいつか?【司法書士が解説】
法人化のメリット
法人化するメリットは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。 〈1つ目〉社会的信用度が上がる 〈2つ目〉有限責任となり、オーナーの責任の範囲が「出資の限度」になる 〈3つ目〉決算期を自由に変更できる※1 ※1 個人事業主の場合は1月1日から12月31日と決まっているが、法人化して会社になれば、決算期は自由に選択できる。 〈4つ目〉一定以上で税負担が軽くなる 〈5つ目〉社会保険に加入することができる 〈6つ目〉赤字を10年間繰り越しすることができる これらのなかでもとくに「社会的信用度が上がる」点に関しては、筆者の例でも述べたように、「法人でなければ契約できない」とする会社も少なからずあるため、法人化することで取引先の幅が広がります。同様に金融機関からの資金調達もしやすくなるため、必然的に事業拡大に繋がっていくと思われます。それらが売上増に寄与するなら、最も大きな利点になるといえるでしょう。
法人化のデメリット
逆に、法人化のデメリットはあるのでしょうか。主に考えられるのは下記の4つです。 〈1つ目〉会社設立のためのイニシャルコストがかかる 〈2つ目〉社会保険に加入する必要性がある 〈3つ目〉法人税申告書の作成義務や、会計事務の手続きが増える 〈4つ目〉赤字であっても税金の支払が必要 〈2つ目〉であげた社会保険に加入は、メリットの方でも説明しましたが、金銭的負担の発生という点では、デメリットにもなりえます。 〈3つ目〉であげた法人税申告書の作成義務や、会計事務の手続きですが、会社の会計は個人事業主の会計より複雑であり、税理士事務所や会計士事務所への依頼が必要です。そのため、毎月のランニングコストが発生します。 〈4つ目〉の税金の支払ですが、法人の場合、どれだけ赤字になっても年間7万円の支払いが必須となるため、要注意です。 法人化にあたっては、以上のような負担が増え、それがデメリットになるという点を念頭におく必要があります。 会社設立時の費用であれば、事前の予測が可能ですが、実際に注意が必要なのは、税金の負担や消費税納税などを含め、赤字の時期にまでのしかかってくる継続的な支払義務のほうです。 これらの点から、最も注意を要するのは、設立資金よりも、あとから負担がかってくる税金等の費用なのです。これに備えておかないと、「赤字+支払い義務」のダブルパンチで、費用の捻出に苦しむことになります。そんなツラすぎる事態を避けるには、税金にまつわる知識が不可欠なのです。 法人化のベストタイミングや注意点は、事業内容や業界によって差異があります。いずれにしろ、税が密接に関わってくることから、法人化、法人成りについては、自己判断で行うのではなく、税のプロである税理士等に相談して決定するのがよいでしょう。また、会社法人の設立は司法書士などに相談するのが安心だといえます。 加陽 麻里布 司法書士法人永田町事務所 代表司法書士
加陽 麻里布
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