元箱根ランナーが読み解く、ランニング市場の“今”
趣向性のあるイベントも増えている。「トラック記録会や山手線1周ラン、パン屋をめぐるランニング、綺麗な景色を求めたイベントなど、催しの種類が多様化している。コロナ禍を経て、ランニングの選択肢が広がったと感じる」と黒崎社長は話す。また、ロードレースに比べて密のリスクも少ないトレイルレースは、「大会復活が早く、大会数も増えた」という。
一方で、課題もある。エントリー費が高騰し、定員割れする大会も見られるようになった。「RUNNET」を経由した参加料平均単価は「19年が6424円で、23年は7987円まで高騰した。コロナ検査のほか、物価上昇の影響も大きい」。ボランティアなど大会の担い手不足の問題もある。ニーズを踏まえて、必要な大会に選択と集中をすることも、一つの手段だろう。
インバウンドの波 インバウンドの復活も著しい。東京マラソン財団の早野忠昭理事長兼レースディレクターは、「東京マラソンの外国人参加者数は前回が約1万2000人で、今回(3月3日)はさらに増える見込み」と話す。アルペングループ最大の旗艦店「アルペントーキョー」にも訪日外国人が押し寄せる。同店の国松君祥ランニングシニアアドバイザーは、「最近は7割ぐらいがインバウンドのお客さま。観光バスの発着点が近いこともあり、空港からダイレクトで来られる方もいる」という。同店では、幅広いニーズに合わせて、常時200~250モデルのランニングシューズを販売し、「ナイキ」「アシックス」「オン」「ホカ」が人気だ。「『オン』と『ホカ』はファッションアイテムとして購入する方も多い。『オン』はタイの、『アシックス』は米中のお客さまがよく買っていく」(国松氏)。なお、アールビーズが実施する「ランナー世論調査2023」によると、市民ランナーが履いているメーカーTOP10(複数回答可)は、1位「アシックス」55%、2位「ナイキ」34%、3位「アディダス」21%、4位「ホカ」17%、5位「ニューバランス」14%、6位「ミズノ」13%、7位「オン」8%、8位「ワークマン」3%、9位「ブルックス」3%、同率9位「プーマ」3%だ。