俳優・監督・ミュージシャンとして活躍する森崎ウィン「ずっと歌は続けていきたい」
◇音楽のルーツは祖母と一緒に聴いていた洋楽 ――森崎さんはスカウトされてこの世界に入ったんですよね。小さい頃から歌を専門的に習っていたわけでもなく、それでいてこのクオリティなのはすごいですよね。 森崎 : たしかに! 才があったんでしょうね(笑)。でも、ミャンマーにいた小さい頃から、音楽はずっと身近にあったんです。祖母が音楽が大好きで、いつも洋楽が流れていて。カーペンターズやマイケル・ジャクソン、マドンナ。ボーイズグループだとバックストリート・ボーイズやウエストライフ……。それらを聴いて育った環境は大きいかも。 ――そして、日本でボーイズグループに入って、さらに音楽性が覚醒したと。 森崎 : 一緒にやっていたボーカルにも負けたくないって頑張りましたから。負けず嫌いなんです。もしも、彼が歌が下手だったら、自分もボーカリストとして成長できなかったかもしれないです。 ――今後、アーティストとして突き詰めたい音楽性はありますか? 森崎 : 自分の音楽がどんなジャンルか? と聞かれたら説明が難しくて。ファンクでもあるし、R&Bっぽさもある。とにかくグルーヴィーな音楽が好きだから、それをずっとやっていきたい気持ちは根底にはあります。だけど、そこだけにこだわらず、幅広くやりたい気持ちも同時にあります。 ひとつ信念として持っているのは、ずっと歌は続けていきたい。コロナ禍みたいなことが襲ってこない限り、ライブ活動は続けたいし、森崎ウィンを形成するうえで、大事な要素でもあります。僕が目指すのは“エンターテイナーとして生でも勝負できる人”。そのためには、ライブという生の現場は必要不可欠だと思っています。 自分の音楽を直接渡して、共有して、それでみんなが笑顔になって……。明日への糧を与えられる場所がライブだと思うんです。“与える”とか言ってますが、ライブをするたびに僕のほうがもらってばかりですけど(笑)。見に来てくださる方がいるから頑張れます! ◇初監督映画『せん』がグランプリを受賞 ――いろいろなお仕事にトライされていますが、この6月には初監督したショートフィルム『せん』が「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2024」という権威のある映画祭でグランプリを受賞。肌触りはリアリティがある映画なのに、登場人物が歌い出すというユニークなミュージカル作品ですが、その構想はどこから? 森崎 : オリジナルのミュージカル映像作品が、日本にはなぜこんなに少ないんだ? という思いがずっとあったんです。しかも、ミュージカルというとハリウッド映画の『ラ・ラ・ランド』みたいな、車の上で踊り出すイメージがありますよね。あのハリウッド映画のノリは日本語には合わないけど、日本には日本のミュージカルが絶対あるはず! というのを証明したかったんです。 ――そもそもの企画は、WOWOWで放送された俳優がメガホンを取るシリーズ『アクターズ・ショート・フィルム』の第4弾だったわけですが、オファーをもらって“チャンスだ!”と思われたんですね。 森崎 : 最初に「ミュージカルを作りたい」と言ったら、予算的にも時間的にも無理だと言われて。いや、違うんですと、“日常のなかでもミュージカルはできるんだ!”とプレゼンしたんです。 僕、映画ならではの長回しのワンカットが好きなんですが、そういう昔ながらの感覚を意識して撮ろうとしていたら、撮影監督が「4対3のブラウン管の画角にしよう」とアイデアを出してくれて。撮り方も全部、手持ちカメラにして、最後の中尾ミエさんの寄りのカットだけ三脚を使いました。 そういう手持ちカメラの揺れが、リアリティのある肌触りにつながったのかもしれません。主演をお願いした中尾ミエさんとは、ミュージカル『ピピン』でご一緒していて。目の前でお芝居をしていると、この瞬間の表情をアップでお客さんに見せてあげたい! という表情をされるんです。舞台では伝わらないのが悔しいと思っていたので、それを映像で切り取りたいと考えました。 ――初監督にして、これだけの高評価。また監督をしたいですか? 森崎 : 自分の中に撮りたいものが出てきたうえで、撮らせていただく機会があれば挑戦したいです。監督をしたことで、俳優部にいるだけでは携わらないスタッフの方にも会えたのは大きくて、“こういう思いで作品って作られているんだ”ってことが発見できましたし、これからの現場での過ごし方もきっと変わるだろうなって思います。それがプラスに働いて、俳優としての自分がどう変化していくかにもワクワクしています。 (取材:本嶋 るりこ)
NewsCrunch編集部