【F1メカ解説】スプリント実施にもかかわらず……中国GPに投入されたアップデート。激戦の中団を戦い抜くため、立ち止まることは許されない
F1では、年間6戦がスプリントレースを行なう”スプリントフォーマット”で行なわれることが決まっている。このスプリントフォーマットで開催されるグランプリでは、フリー走行が金曜日の1回しかない。そのため、アップデートパーツを投入したとしても適切に検証できる時間がなく、各チームはこれを避ける傾向にある。 【動画】スーパーフォーミュラのマシンを使った自動運転レース『A2RL』 inアブダビ しかし2024年のF1は、特に中団グループの争いが熾烈を極めており、ほんのわずなか効果でも、ポジションに大きな差を生む可能性がある。 中国GPは今季初めてのスプリントフォーマットで行なわれたグランプリだったが、そんな違いを求めて、いくつかのチームがアップデートを投入。アルピーヌとハースは、かなり大規模なアップデートを持ち込んだ。
■コクピットエリアの微調整
メルセデス、ウイリアムズ、RBの3チームは、ヘイローのフェアリングなどコクピットの周辺に微調整を加えてきた。 これらの変更により、マシンのパフォーマンスが大幅に向上するわけではないだろう。しかし、存在していた非効率的な部分を整理するのには役立つはずだ。 これらの中でも特に興味深いのは、RBが施してきた変更である。同チームは、ヘッドレストのドライバーのヘルメット後頭部と接触する部分の形状を変更し、比較的高くしてきた。 ヘッドレストが以前よりもはるかに高くなっているのが、写真を見るとよく分かる。写真の中の◯の中が旧仕様で、ヘルメットとヘッドレストの高さが揃っている。しかし新しいヘッドレストは、それより高い位置に存在している。 このヘッドレストを変更したことで、その後方、エアボックスとロールフープ下のボディワークが見直され、後方に向けてよりスムーズなラインが形成されるようになった。 また以前はエアボックスの下から1本の支柱が伸びていたが、新しい仕様ではこれが2本に増やされている。
■ハースの全力を尽くしたアップデート
今シーズンまずまずのスタートを切ったハースは、中国GPに数多くのアップデートを投入した。 ハースの今季マシンVF-24は、昨年型よりもバランスの取れたマシンになっており、デグラデーションに極端に苦しめられるようなことはもはやない。そのため今回のアップデートは、コンセプトを一新するようなモノではなく、既に築かれたベースの上に構築されたものだろう。 まずはフロアの変更だ。 フロア前端のフェンスが変更され、この部分の気流を改善すべく再調整された。そしてフロア自体も、前端部分の形状が変更され、フェンスの変更と結びつけられている。ただそれだけではなく、その後方にどう接続し、フロア端に気流を導くかという点でも注目に値する。 これらの変更により、フロア端とエッジウイングも変更。エッジウイングのスクロールセクションは少し幅広になり、そこに接続されているストレーキも最適化された。 リヤビューミラーもアップデートパッケージの一部。空力効率を向上させるため、本体の形状が変更された。 新しいミラー本体の基本的な形状は、以前のモノ(写真の小さい◯の方)とは大きく変わらない。しかし、後方に向けて少し長くなっている。これは最小限の変更だが、ミラーによって生じる乱流を軽減し、サイドポンツーン上面とエンジンカバーへの流れを改善している。 エンジンカバーにも、ふたつの変更を加えた。いずれもパワーユニットとその付属品によって熱がどう遮断されているか、そしてそれがマシンの空力効率にどのように影響するかに関連している。 ひとつは、エンジンカバーの側面にあるパネルのルーバーの高さが変更されたことだ。ルーバー開口部の高さが高くなった分、開けられたルーバーの数が少なくなった(メイン画像を参照)。 一方マシンのリヤエンドでは、エンジンカバー後端のサイズが縮小された。これは、気流がエンジンカバーのショルダー部分を乗り越え、マシン後部の細くなった部分にどのように移動するかという流路に影響する。