注文住宅の間取り失敗例3選! 玄関手洗いや広い子供部屋など、改善案とともに解説
注文住宅を建てる際、SNSなどで人気の間取りに憧れる施主は多いですが、実際に住んでみると暮らしにくいことも多いです。今回は、25の間取り診断事例を解説した拙著『この間取り、ここが問題です!』(講談社+α新書)から、人気の間取りを採用している3事例を取り上げ、問題点と改善方法を解説いたします。(株式会社かえるけんちく代表・一級建築士 船渡亮) 注文住宅、予算2000万と3000万ではどのくらい変わる? 目次間取り失敗例1.コロナ禍の負の遺産? 玄関の手洗い間取り失敗例2.子供が勉強できない! スタディースペース間取り失敗例3.将来もめそう! 分割前提の広い子供部屋間取りで暮らして問題点を探す
間取り失敗例1 コロナ禍の負の遺産? 玄関の手洗い
家づくりを始めると、建売やマンションにはない「注文住宅ならでは」の間取りを採用したくなる施主は多いです。 インターネットやSNSなどで紹介されている流行の間取り・デザインはどれもすてきに見えますが、入居してみると「暮らしにくさ」を感じるものも多いので、注意が必要です。 ここからは、3つの間取り失敗例と改善点を紹介していきます。まずは1つ目の間取りを見てみましょう。 40代で会社員の吉岡さん(女性)は、両親から相続した家を建て替えることにしました。 計画のポイントは、広いリビングと日当たり、そして祖母から受け継いだステンドグラスを室内窓として飾ることです。 ハウスメーカーから提案された間取りは、中央の玄関ホールを経由して、南側LDK、東側水回り、西側寝室に入れるようになっています。玄関には、75cm幅の洗面化粧台が置かれいるので、帰宅後、すぐに手洗いできます。 コロナ禍や建材メーカーのテレビCMの効果もあり、玄関に手洗いや洗面化粧台の設置を希望される方はとても増えました。この計画でも、玄関ホール内に洗面化粧台が設置されているため、「玄関入ってすぐ手洗い」が実現できています。 理想的な帰宅動線の間取りと言えますが、一点、大きな問題がありました。それは、玄関の見栄えがとても悪いことです。 生活感があふれる、カッコ悪い玄関 動線的には最適といえる玄関手洗いですが、帰宅して正面に手洗いが見えるというのは、単身者用アパートならまだしも、注文住宅ではカッコ悪すぎます。せっかくのステンドグラスもこれでは台無しです。 この計画に限らず、「玄関正面に手洗い」の間取りはコロナ禍に量産され、「負の遺産」となっています。私が間取り診断した方にも、そのような計画が複数ありました(もちろん間取り改善はしましたが)。 「映えるすてきな手洗い」にするから問題ない、と考える方もいるかもしれません。ただ手洗いや洗面化粧台の周りには、せっけん・タオル・コップといった小物が置かれます。どうしたって生活感が出てしまいます。 住宅以上に、感染症対策が重要な病院でさえ、玄関正面に手洗いを置くという設計はしません。住宅会社は、「玄関は住宅の顔である」という常識を念頭に、間取りを提案すべきです。 【改善案】玄関から見えない帰宅動線内に手洗いを設置 このような手洗いは、帰宅動線を意識して、玄関から見えない位置に配置するのがよいです。 吉岡さんの場合は、玄関ホールを広くして、主寝室とLDKの間に設置しました。この位置なら、玄関からは見えませんが、動線的にも最短で手洗いできます。 この改善間取りで建てた吉岡さんは、「ステンドグラス横に洗面化粧台がある間取りだったことを考えるとゾッとします」と苦笑していました。 入居して半年たってご自宅に伺いましたが、正面に「ステンドグラスだけが見える」玄関はとてもすてきでした。 玄関に手洗いはなくても良い そもそも「玄関入ってすぐ手洗い」が必要か? という視点も大事です。例えば、冬、片手に買い物、片手に子供を抱いて帰宅することをイメージしてください。 習慣にもよりますが、まず子供をリビングで休ませて、買い物の荷物をキッチンに置き、上着をコートかけに掛けてから子供と一緒に手洗い、という流れになる気がします。 このように考えると、上の間取り(別の間取り例ですが)のように、キッチンから手洗いが近い方が使いやすいかもしれません。 自分たちが帰宅時にどのような動きをするかを、間取り上でシミュレーションしてみるとよいと思います。