京都市営地下鉄“ナゾの終着駅”「国際会館」には何がある?
駅前のバスターミナルの脇を抜け、大通りを渡ると…
宝が池公園や国立京都国際会館は、国際会館駅の南側に広がる。反対に北側は、わかりやすいくらいの住宅地、そして文教地区だ。 駅前のバスターミナルの脇を抜け、宝ヶ池通という東西に走る大通りを渡ると、岩倉川沿いに同志社中学校・高等学校のキャンパスが広がる。中高のキャンパスの北には同志社小学校もある。 同志社というと、烏丸線の今出川駅近くに今出川キャンパス、直通する近鉄京都線の沿線にも京田辺キャンパスがある。地下鉄烏丸線は、一面的には同志社のための鉄道路線という役割を持っているのだ。 国際会館駅の周辺は、同志社の小中高を中心にあとはもうまったくの住宅地が続く。同志社と岩倉川を境に西側は整然とした街路に比較的大きな一戸建て住宅が並ぶ。東側はいくらか細く入り組んだ路地が多く、合間に地元の人たちに愛されているのであろう小さな店舗もいくつか並ぶ。 そうした住宅地の合間にはポツポツと小ぶりだが過ごしやすそうな公園があって、同志社小学校の北側には野球場を兼ねた岩倉東公園という大きめの公園も整備されている。 町を南北に流れる岩倉川沿いも木々が植えられて、緑が豊かな静かな町だ。賑やかなのは、同志社小中高のキャンパスの中と、クルマ通りの盛んな宝ヶ池通りくらいだろうか。ところどころに住宅地に穴があって畑になっているところから、かつてこの地域が農村地帯だったこともうかがえる。
この町は“少し離れている”京都とどう付き合ってきた?
そんな静かな町中を岩倉川に沿って北に抜けてゆくと、川を渡る線路が見えてくる。地下鉄の国際会館駅から10分ちょっとは歩いただろうか。 そこを通っているのは、叡山電鉄鞍馬線。天狗でおなじみ、そして源義経が幼少期を過ごしたことでも知られる鞍馬寺に通じるローカル線だ。岩倉川のほとりには、その名も岩倉駅がある。
岩倉は、京都の市街地北端の町だ。南側には松ヶ崎丘陵があって京都盆地と隔てられていて、北には若丹山地が聳えている。東に見えるのは延暦寺が鎮座する比叡山。西も上賀茂神社の丘陵地が控えていて、岩倉の町だけで小さな盆地を形成している。 京都の中心部からは少し離れているという事情もあって、古くから京都の衛星都市的な位置づけだったようだ。古くは王城鎮護を目的に山の中に一切経を埋めたことがはじまりで、実相院や大雲寺といった由緒ある古刹も多い。 古代から中世にかけては窯業が発達、江戸時代には禁裏御料(朝廷の所領)だったという。この時代には岩倉村内に所領を得ていた村上源氏久我家の一族が「岩倉家」を称しており、その末裔が明治維新の立役者・岩倉具視。岩倉盆地の中には、岩倉具視が隠棲した邸が残っている。 ただ、そうした岩倉の中心地は、国際会館駅の周辺ではなく、叡山電車岩倉駅の北側、実相院を中心とした一帯だ(岩倉具視の隠れ家もそのあたりにある)。叡山電車の線路より南側の一帯は、長らく京都近郊の農村地帯に過ぎなかった。